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特定非営利活動法人横浜アートプロジェクト理事長榎田竜路 榎田竜路写真

特定非営利活動法人横浜アートプロジェクト http://www.yokohama-artproject.com/

1964年生まれ。神奈川県出身。2001年4月に任意団体「横浜アートプロジェクト」設立。以来、次世代を担う子供たちの教育の多様性を探求し、社会に明るい未来像を提示するために、非営利コンサート、東アジアの映像教育機関の連携を培う学生映画祭、日中韓共同・横浜開港150周年記念映画「3つの港の物語」製作(製作統括)等の映像教育事業、また緑化プロジェクトなど芸術教育、環境保全活動を通じた人材育成・交流を図りながら、個々人や、各地域の活性化を目指してきた。2009年よりこれまでのネットワークとリソースを活用して、映像を活用した地域活性プロジェクト、アースボイスプロジェクト開始。「序破急モデル」という「型」を用いた独自の映像制作手法で地域と世界を結ぶ映像制作の実施及びローカルメディアプロデューサー育成講座や講演を開始。

 

 Rain Maker Project (砂漠緑化プロジェクト) http://www.rainmaker-projects.com/

 Earth Voice Project (グローカルメディアプロデュース事業) http://www.yokohama-artproject.com/YAP/EVP.html

 ケダモノの進め(榎田竜路ブログ)  http://ryuujienokida.blog120.fc2.com/

(聴き手:ビズデザイン株式会社 代表取締役・木村 乃)

(掲載日:2010/9/29)

地域に根ざした、地域の人による世界に通用するコンテンツをプロデュースする

(木村) ミュージシャン、映像プロデューサー、砂漠の緑化プロジェクトの主宰者、北京電影学院客員教授など多彩な「顔」をお持ちの榎田さんですが、最近は、「グローカルメディアプロデュース事業」に注力されていますね。

(榎田) クロスメディア時代の本質は、情報戦略において中央の原理、業界の原理から地方が解放されるという点にあります。ソフトパワーの源泉は「神話力」~物語を喚起し、感覚を誘導していく力です。「神話」は地域の中にあります。地域に根ざした、地域の人による世界に通用するコンテンツをプロデュースするプロジェクトが「グローカルメディアプロデュース事業」です。今年(平成22年)の1月に東京都墨田区で「まち映像プロデューサー講座」を開講しました。現在ではその卒業生たちが「地域の良いことを映像で発信していく」任意団体「すみだいいことハンター隊」を結成して活動を続けています。現在は、愛媛、島根、沖縄、大阪でも展開しています。

(木村) 映像を活用した地域情報の発信という活動はフィルムコミッション等をはじめとして以前から各地で行われていますが、それらの活動との相違点はどういうところにあるのでしょうか。

(榎田) これまでの取組みは、その地域に存在する企業や地域資源の表面的映像(神話のない映像)を、中央や業界の原理に支配された既存チャネルに依存して配信しようという平面的、静的な取り組みだったと思います。「グローカルメディアプロデュース事業」の目的は、情報発信地域のメディア力を上げることにより、国内外への情報流通性を高め市場を活性化すること、伝統や文化の価値を共有し域内に住む人々の誇りを高めること、そして域内情報を高度に共有することで地域の安心安全につなげることにあります。事業の着地点は、最新の映像手法を域内で制作配信するシステムを構築し,同時にそれを担う人材育成を図ることで情報発信力の飛躍的な向上を図ることです。立体的で動的な事業であるといえるでしょう。

 榎田竜路写真1

「型」は感覚を発生させ複製させる機能を持つ

(木村) 私も地域文化を起点とすることから地域活性は始まると考えています。ここでいう地域文化というのは、生活習慣、訛りや方言などの言葉、郷土料理など、“ある一定の地理的空間の範囲で営まれている「共通の様式」”のことだと考えています。決して、温泉、神社・仏閣、名所旧跡、景勝等の静的な“リソース”そのものを発信するのではなく、人々の生きた暮らしの中にある歴史や精神性をも包含した「共通の様式」を再認識し、発信することが地域活性につながると信じています。

(榎田) その通りだと思いますよ。日本の地域はリソース(伝統・文化・産業・風景など)の宝庫です。しかし、そのリソースが有効にコンテンツ化されていません。これはとてつもなく大きな機会損失です。地域の文化価値を高め、発信し、精神性と経済の高揚をもたらす取り組みが必要なのです。これを効果的に進めるためのキーワードは「型」であると言っています。短歌や俳句には季語や、五・七・五、三十一文字といった制約があるでしょう?これが「型」です。文字数などの制約があるがゆえに、かえって感覚を集中させることになるわけです。つまり、「型」は感覚を呼び起こすツールなのです。また、「型」にはもうひとつ大きな意味があります。それは共有を進めるツールとしての意味です。異質なものを共有することは難しいですが、「型」は簡単に共有できます。「型」によって呼び起された感覚が「型」によって共有される。共有された感覚が育てば、それこそが「文化」になります。地域を映像化する際にも「型」が不可欠です。僕が「序破急モデル」と名付けた地域映像化モデルも「型」です。「序破急」とは、日本の伝統芸能、雅楽の演奏に対する心構えを述べた概念で、「序:初めゆっくりと静かに演奏を行なっていく」、「破:曲が展開していく」、「急:展開したものがさらに勢い増して昇華していく」という意味合いを持つ、日本古来の「型」です。地域の映像化はもちろん、地域活性の戦略を考えるうえで、このような「型」を意識することはとても大きな意味をもつと思っています。

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「型」は異質なものを同調させ意味ある姿にする

(木村) 地域活性化には「ヨソ者」、「若者」、「バカ者」が必要だということがよく言われますよね。異質な存在による刺激が必要だという意味ですが、単に異質な存在であるということだけだと、一時的な関心の高まりで終わってしまう。しかし、そこに「型」があれば、地域社会にある伝統的コンテンツとそれとは違う新しい異質なコンテンツを融合させ、さらにそれを「地域文化」という次元にまで高めて共有することができるというわけですね

(榎田) 「型」なしで「中身」が生まれることはありません。きちんとした「型」に入ったらきちんとした「中身」が生まれてきます。「中身」の不在は「型」の不在に由来するものです。「中身」の善し悪しは「型」の善し悪しに

依存するものです。「型」とは異質なものを同調させて、意味ある姿にしていくツールなんです。例えば、僕たちは「神」を創ることはできませんが「神社」を造ることはできるでしょう?「神社」は「型」なんですよ。「型」を作ることで中身=神様=ご利益を共有しているんです。

 

「型」の喪失が、伝統文化、職人の技、人を結ぶ基礎である礼儀の喪失をもたらした

(木村) 「型」にはめられるのは嫌。フリーハンドの方がいい。それが近代以降、特に戦後の日本人が求めてきた“進歩”でした。

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(榎田) 僕は、地域活性は「効率」とか「機能」とかの目に見えるものではなく「身体としての地域」=「感覚としての地域」という発想で行うべきだと思っています。日本の地域はまさに感覚の宝庫。それなのに、明治維新や敗戦等の“文革”のせいで、感覚の主体である「型」という発想が生活から消えて来た。「型」を失ったことで日本から伝統文化や職人の技が消えつつあります。人を結ぶ基礎である礼儀も体を成さなくなってしまいました。生活が砂漠化してしまったのです。これが現代的な様々な問題の根源にあると思っています。

 

◆問題解決型のアプローチではなく、「いいことハンター」のアプローチを

(木村) そこで榎田さんは、「型」の再生によって問題解決にあたろうとしているわけですか。

(榎田) 問題解決型の手法は若者の心には響きません。マイナス面ではなく、プラス面に着目してクリエイトするという手法をとっています。今あるものを伸ばす。プラスの部分を、映像、文章、写真等のメディアを使ってストーリー化し、「型」を使って発信、共感を喚起するということです。墨田区の「すみだいいことハンター隊」の名前の通り「いいことハンター」のアプローチが意味を持ってきます。

(木村) 私も今、大学の授業で「映像による地域プロモーション」を指導しています。また、地域活性の原点は中小・零細企業の誇りを取り戻すことだとの思いから、某商工会議所で経営相談を行ったりしています。榎田さんの「グローカルメディアプロデュース事業」の本質をもっと学んで、人材育成や経営支援に役立てていきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

榎田竜路さんが理事長を務める横浜アートプロジェクトによる「Rain Maker Project(砂漠の緑化事業)」及び「Earth Voice Project(グローカルメディアプロデュース事業)」にご関心ををお持ちの方は弊社あてご連絡ください。

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