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世遊名人対談 第34回 茂木 崇史氏 茂木崇史氏写真

■プロフィール

茂木 崇史 氏  株式会社BOLBOP 代表取締役CHO

 東京大学経済学部卒業。2002年よりマッキンゼーアンドカンパニーにて大企業向けの経営戦略立案業務に携わった後、2004年より株式会社リンクアンドモチベーション(東証一部上場)にて、組織人事コンサルティングに従事。2010年からは同社ブランドマネジメント事業部執行役を務める。その後、東日本大震災をきっかけに、2011年に第四期新渡戸国際塾に参加して知見を広げる。2012年に独立し、宮城県気仙沼市にて一般社団法人「まちの誇り」を設立、復興に向けて地域や世代を超えたコミュニティーを創造する活動を行う。人を起点にした地域活性事業を継続的に行うべく、2013年に株式会社BOLBOPを設立し、代表取締役CHOに就任。

株式会社BOLBOP  http://www.bolbop.com/

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2014/12/15)

 

自分の強みが発揮できる関わり方で

(友田) 震災をきっかけにお勤めだった会社を退職されて、被災地支援に関わり始めたとお聞きしていますが、そのあたりの経緯を教えてください。

(茂木) 東日本大震災があって、2012年1月に会社を辞めて、初めは独立して個人事業のような形で、大企業のCSRの現地コーディネート役として、現地を色々回りながら、どういう支援が求められているかをリサーチしながら企業の支援スキームを決定し、支援することから始めました。そこから気仙沼に縁が出来たので、2012年8月に一般社団法人「まちの誇り」を設立しました。
 初めは、地元の方が新しく始めたプロジェクトの事務局なども色々とやっていましたが、それだけをずっとやっていると「本当に自分が回らなくなる」というのは凄く感じるところがあって、やっぱり継続的な事業としてやっていくためには、自分の強みをどこに発揮するかきちんと考えてないといけないと思い始めました。
 気仙沼に本腰を入れはじめた頃は、これまでの経験を活かして東京で研修講師の仕事を受けるということも続けていたのですが、そういった企業研修の場として被災地に人を連れていくということをやり始めました。現地の人にとっては風化が進む中で「リアルに人を連れてくる」ということが大きな意味を持つのだなということをその時に感じていて、そこから着想を得て「企業や人と被災地を繋げられる」ことが自分の強みかもしれないと考えるようになりました。
 そういった強みをきちんと継続的な事業としてやろうということで作ったのがこの会社で、今は合宿研修のような形で東北と企業・人とを繋ぐ仕事、後は現地の企業向けのコンサルティングをいう形で関わっていくということ積み重ねています。もちろんその過程で行政と絡むしごとも無い訳ではないのですが、基本的な立ち位置は事業者視点で、行政の仕事の結果としてどう地域が成長しているか、そして地域をどうつなげていけるかにフォーカスしながら仕事をしています。

 

◆4つの思い込みを転換する

(友田) 茂木さんが東北での仕事をされる中で、特に意識されているようなことはありますか。

(茂木) 東北が真に復興する為には何が必要かとよく議論されますが、私は若者を中心にみんなが意識を変えること。すなわちずっとこの町に住みたいという心の復興を果たすことが必要だと思います。若者を中心に人口流出が続く負のスパイラルを生み出していた要素は、私が「4つの負の思い込み」と呼ぶ下記のような意識にあると思います。

「①地方には儲かる仕事が無い」
「②地方には面白い仕事が無い」
「③地方には閉塞感がある」
「④地方はグローバル化から取り残されている」
の4つです。

茂木氏 写真2

 多少乱暴ではありますが、この4つを感じて将来に希望を持てずに町を出る若者は多いと思います。しかし、果たして本当にそうなのでしょうか?私は真の復興には、4つの思い込みを下記のような意識に変えることが必要だと思っています。

「①素材の魅力はあるのだから、ちゃんと付加価値をつけて売れば儲かる」
「②良い素材に付加価値をつける仕事はクリエイティブで面白い仕事である」
「③インターネットを使えば、エリアの壁を簡単に越えて世界とつながれる」
「④地域の独自コンテンツこそ、これからのグローバル社会で価値を持つ」

 この4つへの意識転換です。このようなことに、地方の人も、都心の人も気づくべきだと思います。この意識転換ができれば、地方の人が地元に住み続けることに希望を持てるようになりますし、逆に東京からビジネスチャンスを求めて地方に移り住む流れも実現でき、今の社会の歪みを生んでいる東京一極集中の構造も是正できるのではないかと思います。

(友田) 「④地域の独自コンテンツこそ、これからのグローバル社会で価値を持つ」は、まさしく、グローバル化の流れから田舎が都市化することでその魅力を失っていることに気づくべきです。非常に簡略化してひとつ例えるとすると旅館がホテルに代わっていくことですね。人はそこにしかないもの“限定”に魅力を感じるわけですが、それをどこにでもあるものにしていくのは非常にもったないわけです。そこで、おっしゃられているように「①素材の魅力はあるのだから、ちゃんと付加価値をつけて売れば儲かる」ようにできるのは、その地域の日常にいない外部の視点が有効だと思います。だから茂木さんのような方が、求められているのでしょうね。

(茂木) 東北という地域を将来に渡って維持していくためには、当たり前のことですが、やはり若い世代が住みたくなる、住み続けるまちであることが大きなポイントだと思います。これは、震災前からの東北の課題であって、(東北だけでなく、全国の地方にとっての課題ですが)それが、震災で大きく露呈した感があります。

 

◆地域のポテンシャルとマネタイズ

(友田) 地域の若者が流出するというようなお話もありましたが、今被災地も含めて地方が抱えている一番の問題点はなんだと感じていますか。

(茂木) やっぱり、地方に行くと圧倒的に人材が足りていないと感じます。最近は色々な形で若者が地方に行ってすごくいい刺激を与えてくれているのですが、一方で個人的には今地方に積極的に関わっている世代よりはもう少し上のちゃんと実務経験を積んできているような人材が必要だなと感じています。というのも、現地の地域経済はほとんど経営者一本勝負で、優秀な人材も余裕がないので日々のオペレーションを回すのが精一杯という感じになっています。 そうするといくらアイデアを持っていても、新しいことはなかなか始められない。なので、そういったところにきちんと回せる人材が入れば、地方の可能性はもっと広がるのではないかなと考えています。

茂木氏 写真3

(友田) 今、東北に入っている若者も多いと思いますが、そのような人材が育っていくという可能性はあまりないのでしょうか。

(茂木) 可能性がないとは言わないのですが、特に被災地など若者が多く入っているところには構造的にすごく大きな問題を抱えているように感じます。というのも、被災地だと“支援”という文脈で人が多く入ってきているのが今の状態だと思うのですが、この“支援”というものは無償で行うが故に今までお金を払うほどの必要性を感じていなかった需要を掘り起こしているという良い面があります。しかし、悪い面で言うとこれらを“無償”で提供するがために、「お金を払ってやってもらう」という感覚が根付きにくくて、支援をしてくれる人がいなくなると、地元に掘り起こされた新しい需要の受け皿は全く残らなくなってしまいます。これが大きな問題で、この時掘り起こされた需要は実は地域の若者が担いやすい、マーケティングとかデザインとかクリエイティブな仕事であることが多いのです。そうすると、本来は支援をきっかけに得られるはずだった、ビジネスチャンスが全く生かされなくなってしまう。

 なので、そういう需要にたいしてきちんと「お金を払ってやってもらう」という価値観を醸成していかなければ、今地方に入った若者も地方にもともといる若者も、その地域でちゃんと稼ぎながら仕事を続ける人材として育てていくことができなくなるのではないかなと考えています。

(友田) 支援で掘り起こされた需要をきちんと、ビジネス化していくというのはすごく共感できるのですが、特に被災地ではそういったことに抵抗がある人は多くないですか?。

(茂木) 被災地に限らずですが、地方にビジネスを全面にして入っていくと、色々と嫌な顔をされる面がありますし、特に被災地では「被災者からお金を取るのか!」というような道徳観が他の地域よりも強くなりやすいというのはあると思います。けれども地域の未来のことを考えると、支援はずっとは続けられないし、支援が終わったら地域になにも残らないというのはやっぱり問題だと思うので、そろそろちゃんとお金もらって地元の会社とビジネスとしてそういう仕事やるっていうことをやるべきフェーズだなと思っています。勿論、サービス提供側もお金をもらう以上覚悟が問われる訳ですが、そうやって切磋琢磨しながら新しい市場を作っていくことが大事なのだと思います。 被災地について言えばそれが言えるぐらいのフェーズにはなってきたかなっていう気はしています。

 

◆企業にも本業を通じて参加してほしい

(友田) 弊社も大手の企業から被災地支援のコーディネートを依頼頂いたりしているのですが、ちょうど3年半がたち企業も支援のあり方を見直す時期に入っていると感じています。そのような企業が被災地とどのように関わることが大事だと考えていますか。

(茂木) 今だからという話ではないかもしれないのですが、やっぱり企業にはきちんと本業を通じて参画することをもっとメインで考えて欲しいという思いはあります。CSR的な関わり方が企業サイドからすると関わりやすいし、社内でも理由が立ちやすいというお話はあると思うのですが、一方で地域サイドではCSRのようなお話は「あるべき論」的な視点からの見方であって、地元サイドで求めている超短期的な問題解決には全く資さない場合があります。だから、そこのギャップをきちんと埋めていかないと、地域にとっては都会からの押し付けを織り込まれているような気になってしまっています。  

茂木氏と友田景の写真

 地場産業の会社からすれば、支援っていう形ではなくて継続的に例えば販路の確保などを担ってもらえるような、支援的な要素もありつつ継続的な事業の関係に繋がるようなものとやって欲しいという思いが強いです。特にそういった意見を強く持っている会社ほど自分たちの足腰でたってビジネスをしようと思っている、すごく意識の高い経営者たちであることが多いです。なので、企業にはそういった方向にフォーカスしていってほしいなという思いはあります。

(友田) 震災から4年目に入り、個人・企業・地域のあり方も大きく変わってきていますね。地域の持続可能を考えるために必要なことを改めて考えさせられました。本日は、本当にありがとうございました。

 

 

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