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世遊名人対談 第33回 吉田太一氏 出島誠之氏写真

■プロフィール

出島 誠之 氏  岡山県政策推進課政策企画員 広島県経営企画アドバイザー

 1981年生まれ。福岡県北九州市出身。小学生の頃から官僚になることを志し、東京大学法学部入学。大学時代にNPO法人ドットジェイピーのスタッフとして活躍。大学卒業後は、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。その後、香港科学技術大学(HKUST)にてMBA(ファイナンス専攻)取得。
 デロイトトーマツコンサルティング株式会社を経て、一般職の任期付任用にて、広島県経営企画チーム主任となり、施策マネジメントの仕組み導入に携わる。現在は、週に2日、広島県の経営企画アドバイザーとして勤務し、週に3日、岡山県政策推進課 政策企画員として、行政組織の改革に奔走している。

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2014/5/13)

 

◆目標・目指す姿を明確にする

(友田) 企業のコンサルティングから公務員として、組織の内部に入って、行政改革を行われていますが、一番強く感じるところは何ですか?

(出島) 同じ規模の企業と比べて、組織マネジメントは十分に出来てないと思います。組織マネジメントを考える上では、組織としての目標をまず設定する必要がありますが、行政分野では、目標の設定そのものが難しい場合が多いと感じています。企業であれば、一つ、利益の最大化というわかりやすい目標があるので単純ですが、行政では目標設定が単純ではない分野も多いです。
 例えば教育でいうと、どういう教育の姿があるべきなのかというところで、コンセンサスが無かったりします。そういう意味で皆が腹に落ちる目標設定というのが凄く難しい。目標設定が難しいから、その議論を避けたりすることが結構ありますね。

(友田) 外部委員として、行政評価の仕事に携わっていても担当職員が目的を見失っている場面に遭遇することは多いです。やることがありきで施策が走っていて、目的が深く議論されていないので、少し違った方向からの意見があるとグラグラしてしまう。だから、目標も取ってつけたようなものになってしまい、質問すると「前年度もこの形でやっています。」と予想どおり前年踏襲の答えが返ってくることが多いです。

(出島) わかります。目標のところでは、数値化できる部分があるのでそこはしっかり作り合意できるようにした方がいいというのがまず一つと、数値化できない部分については、少なくとも目指す姿、こうあるべきといったイメージは持った方が良いと思います。同じ方向を向けば動ける人が集まっているのに、目標が設定しづらいが故にそれを避けてしまうと、どこに向かっていくのかわからなくなり組織的な力や成果が出しづらいのです。企業にしてみると、利益を出す事がそもそも大変なので、利益を出すという目標があります。言ってみれば何もしなくても目標というものがあるものになっています。内部マネジメントは別として組織としての目標はわかりやすいと思います。

出島氏 写真2

(友田) 企業は必然的に目標がある状態になっていますね。それに対して行政のこれまでの評価はアウトプット(活動)が目標の中心でした。アウトカム(成果)指向にならなかったのは、何を持って成果とするのかを議論してこなかったからでしょう。

(出島) 概念としてアウトカム指標とわかっていても、何となくアウトカムって簡単に決められないのが現状だと感じます。やはり議論してどういう成果や姿をこれから実現していくかをきちんと明確に決めなければいけない。難しいからといってその目標設定を疎かにしてしまうと、課題が出てこないし、課題が出てこなければ何をしているのかもわからなくなってしまいます。仮に目標が決まったとしても、目標が明確ではないので現状把握も量が少なかったり、データも無いことが多かったりします。

 

◆物事をシンプルに捉えて課題解決を図る

(友田) 「目標-現状=課題」となるので、目標と現状の差を明らかにしないと課題は明確にならないですよね。また、データは意識しないと取れないものですから、課題が明確でないとそれをクリアするためのベンチマークとなるデータを揃えるところまで行かないですよね。

(出島) 今一緒に仕事をしている岡山県の教育委員会では、学力向上の目標はあったのですが、全市町村の、更に全学校の成績の情報がデータベース化されていませんでした。そのデータベースが無いと、何が課題なのかわからない。そこでまず、データベースの整備から取り組みました。
 凄く当たり前ですが、「目標を決める→共有する→現状を棚卸しする→現状と目標のギャップと課題を見つける→それに対応していく」といった中でその課題の対応は色々な選択肢があるが一番費用対効果が高いものを見つけていく、というシンプルな問題解決のプロセスが有効です。これは、学力向上施策に限らず、すべての政策・施策に言えることだと思っています。

(友田) 納得です。基本的なことの精度をどこまで上げられるかは、仕事でも重要だと思います。サッカーでいえば、ボールを蹴って、止めること、走りながらでもそれを正確にできるスキルが選手に求められるのと同様ですね。

(出島) そうですね。仮に施策まで出来たとして、目標設定→現状棚卸し→施策が企画・立案されて、この次のステップとしてそのモニタリングが一年サイクルになります。この施策の結果がまだ出ていないので結果が出るまでやると言いながら、秋には予算を作らなくてはならない為、評価・検証がなされないまま、また予算を作るということになります。多くの自治体がPDCAや事業評価・施策評価という仕組みを入れていると思うのですが、現実的に一年間そんな悠長なことをしていても遅いと思います。もちろん業務の質による為、所謂成果が出るかどうかが不確実な事業、例えば重点施策に多い新規性の高いものはやはり四半期に一回くらいは見ておかなければいけないと思います。実際に、広島県は早い段階で重点事務事業については四半期に一回のサイクルを回していて、岡山県も教育委員会については教育委員会内でモニタリングを回しています。
 ただ、このモニタリングをやっているのに、PDCAのPに部署が違うから繋がないといったことが起こります。せっかくやっているのに、それを総括して次のステップに繋げることが無いのです。

出島氏 写真3

(友田) 施策評価、事務事業評価と予算が全然リンクしていない自治体がほとんどですね。

(出島) 査定する方が戦略面や効果面をあまり見てないケースはあります。例えば、コスト一覧で全部項目を見て、削れそうなものを挙げていき、スライスしてどれだけ削ったか、といった予算査定を行う。このとき、効果を見ている事業評価と予算を決める査定がリンクしない。色んなやり方があると思いますが、広島県では重点事業を企画部署に共同査定権を持たせるという事をやっています。どういった方式であれ、組織に合った形で査定をする人が戦略・企画の質を見る、予算査定ではなく事業査定を行う、という仕組みでなくてはならないと思います。

(友田) 結局のところ、お金の使われ方の議論にならないのです。議会でも予算委員会は熱が入るけども決算委員会も相変わらずシャンシャンのところがほとんどですね。

 

◆成果を出すためには、計画策定だけでなく実行支援が必要

(出島) モニタリングからPに繋がるという一連のPDCAのクオリティがまだ十分でないと思います。例えばサイクルを短くする事もそうですし、目標の精度をもう少し高めるといった意識が高くない。周囲から「PDCAが弱い」と言われても、そのPDCAの精度のレベルが共有されていないので、職員の人たちも実感していない事には動きようがありません。そこは、地道に説明し続けることが必要だと思います。広島県と岡山県のトップは、クオリティの基準を持っていますが、トップがイメージしているレベルに達するにはまだ時間がかかると思っています。

(友田) 予算と事業評価などが繋がっていないので、全体最適ではなく部分最適になってしまっている。より全体最適になる仕組みを考えないと行政のスリム化はできないですね。

(出島) その全体最適が出来るというのは首長しかいないですし、企業もそうですが、事業部長は事業部益を第一に考えます。自治体の部長や局長もその部局益を最大化するミッションが存在します。企業は取締役の専務・常務執行役員と呼ばれる人たちが複数の事業部を見ながら全社の最適化を図っていきますが、ほとんどの自治体は一人もしくは二人の副知事・副市長ですよね。個人的にはもう少し副知事・副市長が多くても良いと思います。
 明確な成果ビジョンを持っているリーダーがいて、そのリーダーと同じクオリティというか判断基準を持っている人たちを育てる、必要があれば外から呼んでくる、という仕組みが出来ていけば色んな部分が良くなっていくのではないでしょうか。

(友田) 外から見ていてもリーダー(首長)の思いを形にできる職員がいるか、それを育て、使いこなせるかが重要だと感じます。

(出島) 行政では、計画策定だけでなく、実行面でも、まだまだ課題は多いと感じています。もっと実行推進の局面でのサポートがあってもよいのでは、と。

(友田) 業務委託でも計画策定だけで終わってしまうことがほとんどですからね。

出島氏と友田景の写真

(出島) 利益最大化という目的・目標が共有されている世界だと、皆がある程度同じ方向を向いているので、コンサルタントとして外から入っても同じ方向で仕事ができますが、目標が明確でない中、外から入る難しさはあると思います。今僕は、特別職というかたちで目標作りから入らせてもらっていますが、目標が明確な分野については、計画策定だけでなく、実行支援の面で外部リソースを柔軟に使っていくべきだと思います。

(友田) 今後はどういった仕事をやってみたいですか?

(出島) 行政の世界に入って今年で4年目に入りましたが、おかげさまで、目の前のやるべきことや期待されていることは増えてきていますので、まずは、そこでしっかりと成果を上げたいと思っています。その先があれば、広島県や岡山県と同じようにより成果志向の考え方を持っている首長や自治体の人たちがいると思うので、個人的にはそういった方たちと仕事をしていきたいと思います。

(友田) 貴重なお話をお聞かせ頂きありがとうございました。

 

 

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