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世遊名人対談 第3回 吉田太一氏 吉田太一氏写真

■プロフィール

吉田 太一 氏  キーパーズ有限会社 代表取締役

 1964年大阪生まれ。大阪市立桜宮高校の体育科の第一期生。
日本料理の板前を経て、運送会社に勤務。28歳で独立、引っ越し運送業を始め全国初の「ひっこしやさんのリサイクルショップ」開業メディアの話題となる。2002年、遺品整理専門会社「キーパーズ」を設立して話題の人となる。以来、数多くの遺品整理現場に立ちあった経験から、孤立化していく生活スタイルの問題提起のため、DVD制作や講演活動などを行っている。
2011年映画化された、さだまさし原作の「アントキノイノチ」(幻冬舎)のモデル
主著に「遺品整理屋は見た!」「孤立死 あなたは大丈夫ですか?」(扶桑社)、「おひとりさまでもだいじょうぶ。」(ポプラ社)「私の遺品お願いします」(幻冬舎)最新刊「いつか“遺族”になる時のために-知っておきたい遺言・相続・葬儀などのこと」長崎出版 等多数

キーパーズホームページ:http://www.keepers.jp/

書籍案内サイト:http://keepers.co.jp/books/

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2014/4/1)

 

◆「変わっている」と言われたい

(友田) 遺品整理仕事の中から見えてくる「孤立死」について問題意識を持たれ、「おひとりさまでもだいじょうぶノート」を希望者に配布されたり、「孤立死」について知ってもらうためのアニメーションDVDを作成されたり、CSRとして素晴らしい活動をされていると思います。

(吉田) 僕がやっている仕事をよく社会貢献と言う方がいますが、そう意識してやっていることではありません。あくまでもビジネスとしてとらえていて、お金を稼いで家族と従業員の生活が出来て、ちょっとでも安心するために売上を上げたいとは考えていますが、特に大きな野望は有りません。
 基本的に自立を意識しているのでどこにも依存せずに、自分の納得できるようにやっているだけです。そのスタイル見て周りの人が社会貢献と言ってくれるのでラッキーだと思っています。

(友田) 社会貢献という意味だけでなく、日本初の遺品整理会社としてビジネスも順調に発展されているようですが、社長なりの秘訣が何かあるのでしょうか。

(吉田) 日本初の仕事をしている社長とか、全国展開しているとか、テレビに出ているとか、本を書いているとか、そういう一般的なイメージでの見方が僕に対してありますが、直接接した人に聞くと、僕はイメージする社長像に当てはまらないそうです。「ちょっと変わっている」「たたき上げでやってきた社長なのに、あまりがつがつしていない」とか言われます。そのスタイルそのものが他の人から見たらちょっと特徴的な所があったりするらしいです。だけどそれは僕の望むところで、イメージ通りだったり、他の人と一緒と言われるのが絶対に嫌なんです。あえて意図的に変に、変に、動いているわけではないですが、変わっていると思われているのはむしろ嬉しいです。

吉田太一氏 写真2

 秘訣という程のことではないですが、サービス業は自分に合っていると思います。
 どうしたら高い価値を感じてもらえ、気持ちよく沢山のお金を払ってもらえるか、同じ時間の中で、どこまで「気が利く」ことを提供できるか、相手の気付いてないことを気づいた者勝ちだと思っています。
 客観的に物事を考え、相手よりも先に気付き、相手がそれに気付く1秒前に提供してあげると価値が爆発するんです。逆に1秒遅れたら「何なの気が利かないわね?」と言う話になる。相手が期待している以上のもので、想像もしていないことが提供できれば価値がとても高まり沢山のお金を貰えるのは自然な事なんですね。そういう事ばかりを考えて提供していると「よく気が利くいい人ね」と言われます。そういう時に「そんなことないです。僕は金儲けのためにやっているだけ」と言うのですが、そうするとまた「正直でいい人ね」と言われます、人間の心理ってそうなっているんですね。(笑)

(友田) 今日初めてお会いして変わっておられるのかどうかはまだよく分かりませんが(笑)、遺品整理業を始められたという事は確かに普通の人の発想ではないですね。

 

◆「相手が何を求めているか」を見極める

(吉田) 僕の考え方は「困った時には相談してはいけない」と言うものです。相談をすると自分の成長が止まってしまう。それをしてしまうと、考え工夫する能力はが育たないですし、同時に自分の限界点を超えてしまい後戻りできなくなる可能性があります。
 また助言により失敗してもその人に文句を言えないどころか、上手くいったら一生その人のお陰となり、しがらみがどんどん増えていく可能性が発生します。それが結果的に言いたいことが発言できない状況を起し自分のストレスになる可能性があります。
 それなら最初から聞かないで自分で判断して自分で実行してみる、これは経営者だからこそできる特権じゃないですか。もし上手くいかなかったらもう一度考えてまたチャレンジすればいいのです。だから経営者は絶対聞いてはいけない。常にそう心がけていないと決断力が鈍ると思います。全ての問題に対し、必ずシンプルに考えてきました。複雑な問題も常に二者択一に整理して、どちらかを選択する。それを繰り返すことで、方向性は明確になってくる。そうやって常に物事をシンプルに考えるのです。それが自分で考えるやり方です。ですから創業以来ビジネスの師匠の存在が無い状況で、自己流の手さぐりで仕事を作ってきたのですが、今では銀行のお世話にもならなくても、ちゃんと自立度を保った生活ができている方だと思います。

(友田) 「困った時には相談しない」「常に二者択一の選択をする」とは大きなポリシーですね。しかし常に一人で考えて決めて行く中で、不安がつきまといますよね。。

(吉田) 極端な言い方をすれば、商売は「相手の心理」が分かれば何をやってもうまくいきます。創業時、なぜそういう考えになったのかは分かりませんが、「人の気持ちさえ読めればどこでも商売は成功するはずだ。相手が次に何が欲しいのか、6割でも見抜いてやれば商売としては成功する」と思ったのです
そのために人の表情や言葉とか、傾向や癖をよく観察していますが、しばらく一緒にいて見聞きしていればその人がどんな人なのかは大体分かると思っています。20歳前後の若い頃にホテルや立ち飲み屋、クラブや喫茶店など様々な職業に就いていたので人の観察と研究をする機会に恵まれていたからかもしれません。

(友田) そのように人を観察することが営業戦略となっていくのですか。

吉田太一氏 写真3

(吉田) 営業というと、みんな同じような顔して、同じようなものを持って来て、「なんとかよろしくお願いします」とセールスに訪問するイメージをお持ちだと思いますが、それでは単なるお願いです。
 うちの場合の営業とは飲食店の感覚なんです。飲食店の営業は札を返して「営業中」とします。暖簾を掛けてじっとお客を待つのです。そして来店してくれたお客様に満足してもらえるように一生懸命おもてなしをして良い噂を流してもらうのです。要するにお客様に営業マンになってもらうように魅力的なサービスや商品、店舗、スタッフを創る努力が営業なのだと思います。うちの会社もそうであり続ける事が出来るように、常に魅力的に感じてもらえるような努力をしているつもりです。キーパーズはメディアからも気になる存在であるためにさまざまな企画を行ってきました。ある意味ではメディアの人に対して営業しているのです。メディアが興味を示すという事は一般の人が関心を持ちやすい内容である可能性が高いからです。広告宣伝はメディアの人に来てもらう方が効率がよいと考えたわけです、ですので、ちょっとでもメディアの人に興味を持ってもらえるような魅力的な「自分達作り」というのがわが社の営業という訳です。その結果現状1000社近い販路の9割以上は向こうから来てくれた取引先ばかりです。

(友田) 社長の考えが漸く僕の中で腹落ちしてきました。最初なぜ板前さんが遺品整理屋さんをやっているのだろと思っていました。シンプルに二つに分けて考える、選択肢の中で、相手を観察して得た情報をもとに判断をしていく。「気が利く」という表現をされていましたが、要は「相手の困っていることは何なのか」と言う事を常に考えておられるのですね。

(吉田) そう考えて遺品整理の仕事ではメディアへの営業を行い、その結果、現状ではお客様が来てくれる、非常に有難い、理想的な状態になっています。それをどうやって維持していくかがこれからの課題ですが、ちょっと損しても妥協しない、ブレない、スタイルは変えない、ことだと考えています。

 

◆求人で困ったからブログを書いてみたら・・・

(友田) 話しは変わりますが、本を沢山出版されていますが、どういった経緯で出すことになったのですか。

(吉田) そもそも本を出そうと思っていたわけではなく、ブログを書いていたのがヒットして出版社からお誘いの声が掛かりました。元々ブログを書くきっかけとなったのは、求人で困っていたからなのです。当時、遺品整理の会社に勤めたいと思う人は世の中に1人もいません。だからいくら求人にお金をかけても来ないし、困っている時、「ブログ」というのがあるのを思い出して書いてみたのです。内容は実際に体験した出来事です、日々こういうことがあった、ああいうことがあった、この時にこう考えればよかったのではないでしょうかと自分の考えも少し加えるという内容です。少し大阪弁を交じえて書いてみると我ながら結構面白い。これは人が見ても絶対面白いと思うに違いない、と思いました(笑)。
 無理のない程度に、毎日か2~3日に1回ブログを書いて、来たコメントに対する返事は全部自分で書いていました。「勝手にトラックバック」というのを作って、自分のブログ記事と同じキーワードのついたブログを検索して出てくるものに勝手にトラックバックを貼っていくんですが結構相手から喜ばれたんですよ。そして半年程で読者が1日1000人位を超え、就職希望者は一人も来ないのにアメーバブログから「ヒットブロガーに聞く」というインタビュー依頼が来たり、Gooブログでは20位以内に入りました。そのうち訪問者が2000人近くが見るようになったある日、複数の出版社から「本にしませんか」と出版依頼の手紙が届いたのです。そして扶桑社と話がまとまり出版することになりました。するといきなりベストセラーとなり、アマゾンでも総合で4位までランキングが上がり取材が立て続けに来たのです。それからドラマになったり、映画になったり、いろんな賞を取ったりとラッキーな状況がメディア戦略に輪をかけたのです。2冊目以降も順調に出版し、これまでに文庫と海外を入れると13冊の冊の本を出版しました。今年2月に出版した『「遺品整理で」困らないために 知っておきたいこと』(PHP研究所)が最新刊です。結局、ブログでは求人の目的は達成できませんでしたが、その数年後から私の本の読者からの求人への応募が増え、今では9割の社員が元々私の読者さんなのです。

(友田) 今日のお話しを伺って、吉田社長に講演をお願いするならビジネスに関することも面白いじゃないかと思えてきました。

(吉田) 今はビジネスの講演はまだ少ないですが。行政や社会福祉関係の団体からの講演が多いですね。講演内容は「社会から孤立しないために」や「遺品整理の現場から見える生きざま」などのような孤立死防止で有ったり、コミュニティの重要性を話す内容や、学生を対象に「自立すること」とか、「生きること」がテーマだったり、私が自己破産から自分一人でやってきた実績が興味深いので、求職者や再就職支援を受けている無職の子達に対してサクセスストーリを聞かせ、ケツを叩く講演などまであります。最近は年間に60回ぐらい全国から呼ばれてお話に伺っています。
ビジネス関係の講演では新しい業態を創造し10年間で全国展開し、キーパーズというブランドをつくった事や、自己流の自力でやってきたという話は興味深いようで、JCや中小企業連合会、ライオンズクラブ等からも依頼が有ります。実は、ビジネスの話しをしていている方が気を使わなくていいので思い切り話せるので面白いと思いますよ。(笑)

吉田太一氏と友田景の写真

(友田) 本日は色々と面白い話しを聞かせていただき、どうもありがとうございました。

 

※ご講演等のお問い合わせ、吉田太一氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

  

  

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