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世遊名人対談 第31回 長浜洋二氏 長浜洋二氏写真

■プロフィール

長浜洋二氏 NPOマーケティング研究所 代表

 山口県出身。1992年、中央大学法学部法律学科卒業後、NTTに入社。その後、マツダを経て、現在、富士通にてパソコンやスマートフォン等のパーソナルデバイスに関わるマーケティング業務に従事。広告(マス、インターネット)、プロモーション、営業、チャネル政策、WEBサイト(ショッピング)運営等、広くマーケティング戦略の企画立案・実施に携わる。
1997年から米国ペンシルバニア州のUniversity of Pittsburgh、Graduate School of Public and International Affairsへ留学し、NPOマネジメントや公共政策に関わる公共経営学修士号(MPA:Master of Public Administration)を取得。卒業後、ニュージャージー州のCenter for Social and Legal Researchにて、『Japan-U.S. Privacy and Personal Data Protection Program』のProgram Coordinatorに就任。日本のプライバシー・個人情報保護に関する法規制や政策等の調査・研究をはじめ、ファンドレイジング、ロビイング戦略推進、アライアンス提携、プライバシー・ポリシー策定などのコンサルティング、カンファレンス開催など、非営利セクターでの業務経験を持つ。
現在は、大手企業に勤務の傍ら、NPOマーケティング研究所の代表として、日本のNPO界へ向けてマーケティング研修プログラムを提供する「草莽塾」等を展開中。公益社団法人シャンティ国際ボランティア会理事、エイズ孤児支援NGO・PLASアドバイザー、赤い羽根共同募金モデル事業パートナーなども務める。

NPOマーケティング研究所 http://www.npomarketing.org/
NPOマーケティングで社会を変える!『草莽塾』 https://www.facebook.com/somojuku
【ブログ】飛耳長目:アメリカにみるNPO戦略のヒント http://blog.canpan.info/hijichomoku/

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2013/10/31)

 

◆レールは自分で引いていく。

(友田) 長浜さんは、社会人として働き始めてからアメリカへ留学をされていますね。長浜さんにとって、そこが大きなターニングポイントだったのでしょうか。

(長浜) そうですね。日本では中学、高校、大学と3年に一回受験という試練が与えられて、そこを乗り越えていけばいいようにレールが引かれていますよね。その流れで就職することが多いと思いますが、私もまったく同様でした。自分で主体的に考えるわけではなく、目標が降ってくるものを受け身でこなしていました。半分流されるように会社に入ったのですが、どういうスキルを身に付けて、将来どういうことして、など明確には考えていなかったわけです。会社に入って、あらためてビジョンや目的をもたずに生きてきたことを突き付けられ、そんな自分の甘さを入社2年目くらいに痛感しました。これではダメだと思い、一からやり直さなければいけないと決心して、入社後ぴったり3年で人生のリセットとして会社を退職しました。

(友田) 学校生活を送る中で、人生の目的やビジョンを考える機会はなかなかないですよね。しかし、なぜまた留学をされようと思ったのでしょうか。

(長浜) 就職活動をしていた時から漠然と公的な機関での就職を考えていました。もう一方で、海外と繋がる仕事をしたいという思いもありました。結局、消去法的に民間企業に就職してしまったわけですが、その当時は、湾岸戦争やベルリンの壁崩壊、民族問題や南北問題などの世界的なニュースが日本においても大きく取り上げられ、国際問題を論じるときに政治・経済・民族・宗教など多面的に社会を見る必要があると言われ始めていました。そのような時代背景もあって、留学後は、国際公務員として働くという選択肢も社会的に認知され始め、、私も国連職員として働いたり、地元の山口県で国際交流などに携わることをと考えていました。

(友田) そうですね、92年にはリオで地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)があり、インターナショナルからグローバルへと日本でも使われている言葉が変わっていった時期のように感じます。私も94年にアメリカへ留学しているのですが、当時高校生ながら何となくそんな雰囲気を感じていました。

(長浜) 確かにそんな時代でした。私は、そういうことを選択肢にいれながら、海外で国際関係論などを勉強しようと思い留学をしました。大学院での最初の学期が終了し、長期休暇に入った時に、英語を身に付けるためにもインターンシップを探しました。その先が、NPOだったのです。今と違って、日本では、ほぼ認知されてなかったNPOが既にアメリカでは、しっかりとひとつのセクターとして存在していました。資金集めのファンドレイザーやプログラムオフィサーなどの肩書があり、特にファンドレイザーは、「今日はチャリティイベントで100万円稼いでくるから!」と言ってオフィスを出て行き、職業として確立していたのにビックリしました。

長浜洋二氏 写真2

 

◆社会課題が山積するまちがNPOを確立する

(友田) 阪神・淡路大震災が95年にあり、この年がボランティア元年と言われていますが、日本にNPO法(特定非営利活動促進法)ができたのは98年ですから、その頃には既にアメリカでは、NPOが確立されていたのですね。

(長浜) そうですね。特に私が留学したのが、ペンシルバニア州のピッツバークという町で、「鋼鉄王」と呼ばれたアンドリュー・カーネギーを輩出した地でした。町は鉄鋼で栄えましたが、公害問題があり、またその後の鉄鋼業の衰退もあり、ピークから人口が半減するなど多くの社会課題を抱えていました。そういった状況のなか、『ルネサンス(復興)計画』が展開され、まちの立て直しを牽引していたのは、行政でも企業でもなく、NPOなどの市民セクターだったのです。インターン先で行われていた事業は、海外や国内から色々なビジターがやって来ることが多かったピッツバーグの町において、外部のリソースと町の内部の行政や企業や研究者等とのマッチングをして、様々なプロジェクトを生み出すというものでした。自分たち自身は特定のリソースを持たず、マッチングをするなど、創意工夫で新しいことを生み出すNPOの姿に驚きと感銘を受けました。そして、何より公的分野と言えば、行政しか捉えていなかった自分にとって、NPOという新しい選択肢は非常に魅力的でした。そこで、大学院の学部を変更して、NPOマネジメントの研究を進めて行きました。

(友田) 当時、アメリカでは既にNPOが学問として確立されていたんですね!そのことが何より驚きます。日本では、明治大学が公共経営学科として、NPOを学ぶコースを用意していますが、現在でもNPOと名称がつく学科は日本にはないですよね。具体的にはどういう内容を学ばれていたのでしょうか。

 

◆すべての組織にマーケティングは必要

(長浜) 大学院ですから、NPOマネジメントなどでは、ケーススタディーなどを多くやりました。また、実際にピッツバーグ市に出向いて人材育成のニーズ調査なども行いました。マネジメントを学んでいたこともありますが、アメリカの大学院は、往々にして実務的、実践的ですよね。卒業後もNPOで経験を積むために、ニュージャージー州の非営利の研究機関で、2年間、日本のクライアントとのコーディネートの仕事に就きました。その間、NPOという軸は決まったけれど、どういう役割や職種で関わっていくべきか働き続けながら考えた結果、「マーケティング」にたどり着きました。形がなく、目に見えないサービスや社会課題を扱うことが多いNPOの活動は、一般には理解されづらい。そこを打破していくためには、情報を集め、分析し、それを解釈して施策に落とし込み、自分たちの活動の価値をターゲットに伝えていくマーケティングの要素が、NPO活動の寄付集めや支援者の獲得に必須だと感じたからです。

長浜洋二氏 写真3

(友田) そうですね、私もNPOの経営に携わっていますが、基本的にNPOの活動と企業の活動はほぼ相違がないと思っています。大企業とは違い、知名度がないNPOにはマーケティングの要素はより求められると感じています。

(長浜) その通りです。マーケティングは企業のものだけではなく、目的を持った組織であれば、どんな組織でも実践するべき実務だと考えています。現在、「草莽塾」という私塾で、NPOの支援としてマーケティングという武器を身に付けてもらうプログラムを提供しています。
『草莽塾』のカリキュラムは、マーケティングの講義を主体とした「基本習得編」と、自団体の抱える課題を解決するためのマーケティング施策を策定する「戦略立案編」、そしてマーケティング施策を実行する「実践編」の3つで構成されています。NPOに必要なのは、計画性、行動力、継続性の『3K』だと考えており、このプログラムで、その3つを習得してもらいたいと考えています。

 

(友田) 計画性、行動力、継続性の3つは組織運営では当たり前のことですよね。やはりそれが重要だということでしょうか。

(長浜) そうなんですよ。人によっては、何か特別なツールを導入すればそれで売上などの目標が達成できるなどと誤解している人もいるようですが、マーケティングのテクニックの部分ではなく、当たり前の基本動作が大事だと伝えています。広い意味での組織マネジメントなのですが、草莽塾では、例えば戦略立案では、自組織のファンドレイジングについて考えるにあたり、きちんと事業の位置づけやミッションまで踏み込んで、参加メンバ―には喧々諤々の議論してもらっています。ミッションが大事なんていうのは当たり前ですが、そこがきちんと戦略に落ちていくか、普段の行動がミッションから来ているか、外れていないかということはすごく大事だと感じています。そのようなレベルから分析をして、仮説を作って、実行して、また検証する。そのPDCAの繰り返しをすることで、継続性が生まれてきます。もちろん情熱や熱い想いは大事ですが、それだけでは社会に対して成果を出せないですね。

(友田) 同感です。情熱が実務に落ちていくか、それが重要だと感じます。そういう意味で、特にNPOでは、トップの熱い想いを形にできるナンバー2やミドルマネジメントの存在が非常に重要だと思っています。

(長浜)  その通りだと思います。色々な組織を見てきましたが、パワフルな創業者がいなくなって、その後にどうやって新しい事業をやっていくか、組織を運営していくのかで非常に苦労しているところがあります。組織全体でみたときに、誰しもが組織が回せるようになるのが組織運営の基本です。一人ひとりが経営者、ということですね。そのためにも、スタッフ全員が同じ言語で経営に携われなくてはなりません。同じ言語とは『数字』です。NPOでは圧倒的に数字で事業を語られることが少ないですね。数字というファクトベースで議論をして、戦略に落とし込み、実行をすれば、成果が出やすくなると感じています。そのためには、経理や総務や法務などのスタッフもマーケティングは知っておかなければいけないので、草莽塾では、NPOの経営層だけでなく、組織のあらゆる人の参加をお待ちしています。

長浜洋二氏と友田景の写真

(友田) すべての人にマーケティングは必要とは非常に納得です。組織だけでなく、個人として見た場合に自分のやりたいことをやっていくための自己実現する意味でもマーケティングは必須科目ですね。熱い想いを普段の実務に落とし込むように私もPDCAを回していきます。
 本日はありがとうございました。

 

※ご講演等のお問い合わせ、長浜洋二氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

 

 

  

  

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