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世遊名人対談 第29回 片山ます江氏 片山ます江氏写真

■プロフィール

社会福祉法人 伸こう福祉会 専務理事 片山ます江
非営利法人「アショカ」認定アショカシニアフェロー

大阪府出身。1976年に認可外保育園「湘南キディセンター」を神奈川県藤沢市に開園。その後、老人ホーム「グラニー鎌倉」をオープンし、伸こう会㈱を設立。介護施設では初めてのISO9001を取得するなど常に先進的な取り組みを続ける。その後、伸こう会㈱を(株)ベネッセコーポレーションへM&Aにて売却し、その資金を元にして、社会福祉法人伸こう福祉会を設立する。現在は、特別養護老人ホーム、グループホーム、デイサービス、有料老人ホーム、ショートスティなどの36の介護事業(「クロスハート」)と8つの保育事業(「キディ」)を運営し、人生の始まりと最後の時間を有意義なものにするための事業を展開している。

伸こう福祉会ホームページ http://www.shinkoufukushikai.com/
アショカフェロー紹介ホームページ http://bit.ly/18CjeCU

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2013/8/6)

 

◆“はじけた”福祉施設

(友田) 川崎市のクロスハート幸にお邪魔していますが、とても素敵な施設で驚きました。介護施設とは思えない設計、インテリアですね。

(片山) この施設は川崎市の公募で小学校の跡地に開設しました。古い団地に囲まれていますので、地域の方々にも自由に使っていただこうと、ここの1階は「地域に開放」をキーワードにしています。最近の傾向として福祉業界全体が地域参加型になっていますが、活性するまではちょっとした仕掛けを作っていかなくてはいけません。この施設では6月21日から三軒茶屋のコーヒー専門店のバリスタに来ていただいて、コーヒーの入れ方を教えてもらうイベントを全8回の予定で開催し、地域の方にご参加いただいています。

(友田) 「地域に開放する」ということに対してはみんな「無料でやらなくてはならない」という制約があることその意識が強いと感じられます。それによって、「安かろう、悪かろう」という面白くないサービスやイベントになってしまいがちです。しかしこちらでは参加費をちゃんと取られていることがいいですね。

 お金が介在しなければビジネスとしては成り立ちませんし、継続することが難しく一過性になりがちです。お金が介在する方がダイナミックに変わっていける可能性を感じています。

(片山) 「老人ホーム」という枠からはみ出した、はじけた企画、思わず人に話したくなるような楽しい企画を計画していきたいと常に思っています。福祉はサービス業です。「福祉らしい福祉」を追求するのではなく、「お金を払って利用して下さっている方が楽しんで下さる福祉」を考えていきたいです。
 今私達は、日本経営品質賞にチャレンジしようとしていますが、ハードルが高いのは地域の分野なんです。

片山ます江氏 写真2

◆不揃いのメンバーで認められたい

(友田) 日本経営品質賞については、以前議員をしていた時に、三鷹市が自治体として初めて日本経営品質賞を受賞したと知りました。10年位前だったと思います。

(片山) 私もその頃に知りましたが、これまで自分の中で温めてきて、だんだんまとまってきたので挑戦しようと思っているのです。

(友田) 福祉分野で目指すのはすばらしいと思います。まさに運営から経営にシフトされていることが現れていますね。アニュアルレポートもそうでしたが、話題性もありますし、既に色々な取り組みをされていることをISO26000で整理するなど、色々な方法を使うことが有益に働くと感じます。
 日本人は完璧を求め過ぎる傾向があります。出すからには完璧な物を求め、「とりあえず出してみりゃいいじゃない」というのではなくて、「ここがダメじゃない」と言われることを恐れています。そのため無駄な表面のお化粧をして出しています。ダメなところの指摘をもらえる方が改善につながり、サービスは向上します。それを恥と思わず、思い切って勉強不足でも出された取り組み姿勢に対して感銘を受けます。

片山ます江氏 写真3

(片山) 私達は、素人が寄り集まって「良いサービスとは何なのか」ということを必死に考えてきたところから始まっています。私達が最高級のサービスを目指しても難しいけれど、当たり前の、リーズナブルな暮らしなら、少々賢くない、不揃いな私達でも十分に作っていけると思っています。優しさがあれば、人材に関してはバリアフリーです。最近は、学歴やキャリアのあるスタッフも入ってくるようになりましたが、外国籍のスタッフや障害を持ったスタッフ、前職が福祉と全く関係ないスタッフもたくさんいます。そんな不揃いの人達が集まって確立した仕事だからこそ、品質における最高の勲章がほしいのです。だれかに「大丈夫だよ」といわれたいのだと思います。

(友田) 地域社会は色々な人がいて、まさしく不揃い。その中で全体のレベルを上げていくことは、素敵な挑戦だと思います。

(片山) 自転車のようなもので、走るとおもしろい、止まると嫌になります。福祉施設を開設するというのは、最初は名誉として社会に受け入れられますが、そこに情熱をもたないと、名誉でもなくなってきます。しかし自転車を全力でこいでいれば乗り越えて行けます。とばしていれば楽しいし、こんな素晴らしい仕事はないと思っています。

 

◆逆転の発想。有料老人ホームから特養、そしてミュージカル?!

(友田) ここまでこれからチャレンジされたい事を伺ってきましたが、そもそも最初に事業を立ち上げる経緯はどのような事だったのですか。

(片山) そもそも私は、事業とか仕事が好きな人間だと思います。アショカのフェローに選ばれた際の面接で「いくつの時に初めて金銭の取引をしたか」という質問がありました。私は、中学2年の時から人形を作ってお店に卸していたんです。もともと商売が好きだったんですね。
 今のビジネスはお鍋一つ、電話代も払えない所からのスタートでした。子ども預かりからスタートして、有料老人ホームを始めました。ある程度の規模になったときに、M&Aで会社を売って今の事業のための基本財産を作りました。社会福祉事業では、行政の管理下にある社会福祉法人で特別養護老人ホームを初めにやって、有料老人ホームをやるという流れが主流です。しかし、私は株式会社で有料老人ホームを開設してからその事業を売り、その後に社会福祉法人を設立し特養を開設しました。社会福祉法人という行政の縛りのある法人格で運営をすることが、世間で認められることだと思ったんです。

(友田) 「特養の世界に入っていかれたのは認められたかったから」とは、はみ出したことばかりやっていた人が、はみださないことに興味があったからといえますね。私は議員やっていたので、福祉施設入れてくれと言う依頼はよく受けていましたが、有料老人ホームから法人の形態を変えてまで特養の運営に乗り出した例は初めて聞きました。福祉は福祉らしくなくすると言い、逆転の発想ですね。

(片山) 人の世話においてはどんな法人格でやっても同じです。いい人間が人の世話をして、全面的でなくても、ちょっとでも、その人の事を考えてあげればいいと思うのです。それはそうと、友田さんはなぜ大阪から東京に出てきたのですか。

(友田) 会社が東京なので転職をきっかけに上京したのですが、議員をやるなかで、色々な相談事を聞いていて「行政だけで社会問題を解決するのは無理だ」と感じました。企業の力を活用してダイナミックに取り組んで行かないと無理で、「地域の力」、「企業の力」、「行政の力」を結集する必要があると考えています。組織にはその組織の色々な制約もあり、手を組めない状況がありました。しかし手を組めばできる事はあると信じて、民間からアプローチしてみようと思い、今の会社に来ました。いろんな所からのアプローチでビジネスを発展させながら、社会課題を解決していきたいと思っています。

(片山) 福祉の仕事も外部の人の力を借りてやらないと発展しないと思っています。プレスリリースなどもコンサルについて1年くらい色々と教わりました。
 昨年度は組織の内側を固めるツールとして、「ミュージカル」を行いました。総額200万円位の費用がかかり、最終的な収支は6万円の赤字が出ましたが、メディア露出による効果は300万円と試算しています。メディアリリースをしていく事をプロに教わって実践した効果は大きかったと思います。プロに指導していただく効果を実感しました。

(友田) アニュアルレポートにも掲載されていましたが、ミュージカルはスタッフや利用者が参加したのですよね。ここでも2000円のチケットでちゃんとお金を取られていますよね。

(片山) 各地にある施設からスタッフやその家族、利用者合わせて約200人が舞台に上がって上演しました。2200人の人がお金を払って見に来てくれたんです。ミュージカルは学芸会以来やったことがなかったというスタッフが多かったのですが、皆楽しそうでしたよ。これも「ひとづくり」だと感じました。どうやって人材を教育し、介護の質の向上にもっていくか、とは常に課題です。しかし勉強ばかりしていても楽しくありません。週末は歌ったり踊ったりできれば楽しいものです。

片山ます江氏と友田景の写真

(友田) 弊社では社会的効果を可視化する(SROI)という評価を実施しています。ミュージカルに参加して、その結果、「新しいことにチャレンジした」、「中学生が福祉の仕事に就きたいと思った」などは明らかな効果であると言えます。SROIでは社会的な意義、例えば無業者の就労支援において就職できるまでの効果を段階的に測っています。福祉では目に見えない価値を見えるようにすることは重要であり、効果的だと思います。

(片山) 今後は組織の外側を固めるための事業として、海外に出て仕事しよう、海外の人を巻き込んで仕事をしようと言う発想で海外の福祉関係者と交流していこうと考えています。

(友田) 新たな取り組みで、ますます活躍の場が広がっていきますね。今後の新たな展開も楽しみにしています。本日はありがとうございました。

 

 

※ご講演等のお問い合わせ、片山ます江氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

 

 

  

  

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