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世遊名人対談 第27回 西村修氏 西村修氏写真

■プロフィール

西村 修 氏  中越パルプ工業株式会社 営業管理本部 営業企画部部長

 大学卒業後、総合製紙メーカーの中越パルプ工業株式会社入社。入社後、製紙原料である国内材集荷拠点を国内各地、外材集荷拠点のアメリカを赴任を経て、現在は東京本社勤務。2009年横浜開港150周年記念テーマイベント「開国・開港Y150」への出展をきっかけとして1998年より同社で製造されていた「竹紙」をブランディングし、対外的に広める活動を主導。エコプロダクツ大賞農林水産大臣賞など、この4年間で環境分野における数々の受賞を果たす。

中越パルプ工業株式会社 http://www.chuetsu-pulp.co.jp/

第1回いきものにぎわい企業活動コンテスト審査委員特別賞 

第8回エコプロダクツ大賞農林水産大臣賞

「低炭素杯2012」審査員特別賞・最優秀プレゼンテーション賞

第1回ソーシャルプロダクツ・アワード ソーシャルプロダクツ賞

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2013/6/18)

 

◆会社の誇りが40代の社員を変身させる!

(西村) これまでの対談を拝見しましたが、企業やNPOの代表の方々ばかりが話されています。今回どうして会社員の僕に声を掛けていただいたのですか。

(友田) これまで社会起業家と呼ばれている人達にフォーカスしてきましたが、そればかりではなく、大企業の中においても社会をよくするために頑張っておられ、成果を出されている人にも注目していきたいと思いました。その中で、一部上場企業の中でも失礼を承知で言えば、古い業界体質である製紙会社の中で、社会貢献活動を含め、新しい取り組みにチャレンジされている西村さんに興味が湧きました。

(西村) ものすごく正直に言うと僕が一生懸命仕事をしだしたのはここ4年位なんです(笑)。入社当初からこの会社は自分に合わないと思っていました。転職したいと思いつつも、縁故入社でしたし(笑)、「石の上にも3年」と思いつつも2年目で転勤を繰り返したり、その後はアメリカ駐在になり、また子どもができたりしていると、なかなか思い切ることができませんでした。もちろん会社では一生懸命のフリをしてやっていましたが、本心は「休日こそが楽しみ!」で、毎週末、スノーボード、カヤック、バイク、サーフィンなど、アウトドアスポーツを目一杯満喫することだけが生きがいでした(笑)。

(友田) 失礼ながら「社会人を20年してきて、40歳を過ぎた人が大きく変わった!」というのは、非常に珍しいと感じています。これまでの対談相手は、若いうちから社会を変えようと思って取り組んでいる人ですが、そうではないパターンです。若い社会起業家という人は増えてきましたが、西村さんのように大企業の中で責任ある立場の人が変わって行かないと大きく社会は変わっていかないと感じています。やはり企業の力は大きいですからね。西村さんが4年前から変わられたというのはどのようなきっかけだったのでしょうか。

(西村) 何もしていないくせに、「もっと社会に役立つ仕事ならヤル気になるのに」と長い間思っていましたが、弊社の「竹紙(たけがみ)」の取り組みに関しては、誇りに思える、この会社の武器だと感じました。製紙業界は国内需要が頭打ちにある中で、会社の存続のために新たな武器として特別な機能を持った紙を作れれば、と唱える社員はたくさんいますが、そのようなものはなかなかできるものではありません。しかし、既にある竹紙は他社にはない取り組みであり、弊社の「ブランディング」に使えると思ったのです。竹紙は人に話すととても共感されます。それを使っていい会社に見せる、それがとっかかりになりました。

西村修氏 写真2

 2009年に開催された横浜開港150周年記念テーマイベント「開国・開港Y150」で「パビリオンに使った大量の竹を紙にリサイクルしてくれないか。せっかくだから出展もしないか」という誘いがあり、会社として過去にそのようなイベント出展の経験はありませんでしたが、会社が受諾しており参加することが決まっていました。そんな中、本社機能が富山県高岡市に移ることになり、営業以外の人がほとんどいない状態で、営業じゃなかった私が全て担当することにしました。理由のひとつはこの責任者である直属の上司(役員)が困っていたから、もうひとつは誰もやらないけど他の人にはできなくても自分には出来そうな気がしたからです。会社として前例がないので、ブースの企画、出展、運営など、誰にどう相談するのか分からないながら、試行錯誤でやり切りました。

 このイベントを通じて、竹紙の取り組みが共感されることを確信しましたし、自分で仕事を創り出すことも覚えました。企業のブランディングは私の仕事ではありませんでしたが、社内で誰がしているわけでもないので、僕が手を挙げてやることにしました。そのことで社外の新たな人に出会い、色々お話しをすると色々な人が知恵を授けてくれました。4年前から実施している「アースデイ東京」への出展も、社外の人の情報がきっかけとなりました。そういった取り組みの中で、いい人と知り合う機会があり、人と繋がることができています。社内にこういう良さをわかってもらい、広げていくのはなかなか難しいのですけどね。

 遠くを見据えたのんびりした感じは大企業の良さのひとつですが、それだけでは今の社会の変化についていけないと確信しています。まして製紙産業は大量生産の古いビジネスモデルのひとつで、中堅メーカーが今後このまま続けていけるとは思えません。それをトップや他の誰かが考えるのではなくて、社員一人一人が考えなければいけない時代に入っていると感じています。とはいえ組織に変化を求めると批判されることやなかなかうまく行かないことも多いですが、試行錯誤しながらやっています。

 

◆行動様式に焦点を当てると、変化が生まれる

(友田) 僕も過去に最年少で議員になったので何かあると鬼のクビ取ったように叩かれました。出る杭は打たれる、しかし出すぎる杭は打たれない。中途半端に出ているから叩かれる。出すぎている釘は強くは打てないものです。なので、「あいつは仕方無い」と思われるまでやろうと決めました(笑)。議員の場合、一番よくないのは薬にも毒にもならないという事だと考えていて、ニュースにもならないよりは、失敗して批判されたとしても記事を書かれることの方がよっぽどいいと思って仕事をしていました。

西村修氏 写真3

(西村) 正解が分からないのならば行って戻って、としなければならないですよね。しかし日本社会にはまだまだ言い合う文化がない。言い合ったら浮いてしまいます。社内でなら喧嘩しても良いじゃないかと思いますが、「そんなこと言わなくても分かるだろ」と少なくとも大勢の前では意見を言わない昔ながらの人が大半です。衝突しながらでも進まなければならない状況で、新しい価値観を取り入れていくのは大変な作業です。

(友田) 新しいものを取り入れることや違う文化や価値観を持ち込むことは、業歴の長い企業では難しいですよね。過去に創業400年の企業の支援をしていましたが、意識は簡単に変わるものではないですが、習慣は変えられることができ、その結果意識も変わるものだと認識していきます。そのひとつが、阻害しているものを取り除くということです。

 例えば、多くの会社において何か始める前には必ず決済の書類を回さなくてはならないというルール(習慣)がありますが、新しいことを始めたければ、やることを決めてから書類を回すように変えてしまう提案をします。そうすると事前承認の時間が短縮され、煩わしさがなくなるので、新らしい取り組みを始めやすくなります。本人が不安だったら上司に相談するでしょうから、煩わしい手続きがなくなり、実行できる可能性を広げられます。

 もうひとつが、行動様式に合わせることです。他の事例で、「会社の社是や理念が社員に浸透しない」と嘆かれる会社がありました。そのために何をしているのかと尋ねると「会社の手帳を配っている」といいます。しかし手帳を必要としている社員は、営業の人間だけであまり使われていないんですね。社員の行動様式を見るとパソコンを使っているので、スクリーンセーバーに理念を表示するようにし、パスワードには社是を入力してもらうようにしました。そうすると必然的に目にし、入力するので、浸透度はそれだけで格段に変わってきます。

 

◆小さな前のめり感が、キッカケになる

(西村) なるほど、社員の行動様式に刷り込んで行けばいいのですね。弊社でも同じ悩みがあります。これまでと違う新しいことをしましょう、と言いつつ、新しいことをした人を会社はなかなか評価しません。多少の失敗があっても新しい事を取り組んだ人に目に見える評価をしなければ、次に取り組む人は生まれません。

 私は意識変化のきっかけとして、社外のいい人と交流できる機会を作ればよいと考えています。業界外の人と交流できるような機会を社内で作る、小さなイベントを繰り返して交流をしてく。そういう小さな行動の積み重ねが大事かと思っています。

(友田) 小さな行動の積み重ねということですが、御社のCSR報告書に園芸部の話が出ていましたね。小さな取り組みかもしれませんが、非常に素敵だと感じました。そういう取り組みが、一社員であっても組織を変革していくきっかけとなります。

(西村)  弊社の園芸部は有志が集まって作りました。彼女たちの楽しみながらの自主的な取り組みっていいですよね。社外の呼びかけに応じ、屋上で和紙原料の楮(こうぞ)と三椏(みつまた)を育てています。同じような取り組みを近隣の他社でもやっていますが、継続が難しいようです。他ではうまく育たなかった木がここでは育っているんですよ。小さくても、このような前向きで自主的な取り組みを一人でも二人でも増やしていきたいと思っています。業界として厳しい局面になる中で、会社と自分の価値を上げるためには、前向きに一生懸命やってくことだと思います。

西村修氏と友田景の写真

(友田) 人は自主的なときは、前のめり感が出るんですよね。だからうまく行くことが多い。西村さんは、竹紙をきっかけに面白いと思えるようになった。他の社員もどこかに面白いことがあれば、前のめり感が出てくると思います。彼らの業務範囲の中でどこまできるか、興味の範囲、彼らのテリトリーの中で見つけられることができれば、変革のチャンスだと思います。

 企業再生の仕事の中で、多くの瀕死の企業を見てきましたが、経営をするのはトップの仕事ですが、変革をしていくのは、もはやトップではなく現場の人間だと痛感しました。現場が動かないと再生することはできません。世界的に見て日本には長寿企業が圧倒的に多いというデータがあります。そういう企業では必ず時代に応じた変化を遂げています。それは日本人が社会から何を求められていて、どういう貢献ができるのかを考えてきたからだと考えています。そしてそういう要素が日本的経営、日本らしい企業、日本的CSRになるのではないかと考えています。西村さんと御社のこれからの更なる取り組みに期待しています。

 本日はありがとうございました。

 

※ご講演等のお問い合わせ、西村修氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

 

 

  

  

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