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世遊名人対談第25回石井邦知氏 石井邦知氏写真

■プロフィール

石井 邦知 氏  きゅぽらスポーツコミュニティ 代表

 1982年7月埼玉県川口市生まれ。2001年3月埼玉県立浦和高校卒業(硬式野球部に所属)。

 2006年3月筑波大学社会工学類都市計画専攻卒業。大学時代はNPOの中間支援組織を運営し、NPO間のコーディネートに従事。卒業後は新規開拓の法人営業を行う営業アウトソーシング会社に2年半勤務。その後企画・運営・広報業務を行うイベント企画・運営会社での2年半の経験を経て2011年2月川口に総合型地域スポーツクラブ「きゅぽらスポーツコミュニティ」を設立。(現在は任意団体)

きゅぽらスポーツコミュニティ  http://cupola-sports.jimdo.com/

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2013/5/20)

 

「ソーシャルスポーツ」が生業です

(友田) サラリーマンを辞めて独立し、「きゅぽらスポーツコミュニティ」を立ち上げられたのはどのようなお考えからでしたか。

(石井) 5年間サラリーマンを経験して、長期的に考えてサラリーマンであり続けることにリスクを感じました。またサラリーマン時代は営業のアウトソーシング会社、イベント企画・運営会社と他の会社のお手伝いをする仕事ばかりしていたため、「テーマを持って仕事をしたい」という想いが強くなりました。コンサルティング会社の人がアドバイスするだけでなく、自分でやってみたくなったと事業会社に転職されることがありますよね、そんな心境です。

 また、以前から「スポーツ」というテーマで仕事をしたいと思っていましたが、それで就職することは難しいと感じていました。独立するにしても「スポーツ」の事業を立ち上げるには、例えば中田英寿さんのような元プロスポーツ選手が競合となる可能性もあり知名度からして難しいと思っていました。そこでスポーツに「地域」や「ソーシャル」を加えた「ソーシャルスポーツ」であれば自分にもできることがあると思ったのです。

(友田) 石井さんの考える「ソーシャルスポーツ」についてもう少し具体的に教えて下さい。

(植木) 「ソーシャルスポーツ」のソーシャルとは、”ソーシャルメディア”で使われる時の「人と繋がる」という意味と、”ソーシャルベンチャー”と使われる時の「課題解決に繋がる」という意味です。スポーツが健康にいいということはわかりきったことですので、スポーツが人と人を結びつけるツール積極的な課題解決に繋がるツールとして実施されることが「ソーシャルスポーツ」だと捉えています。その視点に立ったスポーツの活用を広めていきたいと考えており、スポーツを介することでその二つが実現すると実感しています。

石井邦知氏 写真2

(友田) なるほど、単にスポーツをするのではなく、人を結びつけることと課題解決の視点を入れることが、「ソーシャルスポーツ」なんですね。現在の事業は「ソーシャルスポーツ」という括りの中で「異業種交流フットサル」「国際交流バレーボール」「親子交流ファストスポーツ」と3本柱の企画を軸にされていますが、どれが中心の事業とかありますか。

(石井) 特に中心的な事業はありません。サラリーマン時代に学んだこととして、企画提案する際に3パターン用意しておくというのがありました。3つあれば誰でも何かしらに興味を持ってくれると思って実施しています。

 

◆「ソーシャルスポーツ」で、人を繋ぐ・課題を解決する

(友田) 地域のビジネスにつなげることも意識しておられるようですが、具体的にはどのように展開されているのですか。

(石井) フットサルでは参加者の紹介用の冊子を作成しました。業種ごとに分類して紹介しており、他の参加者へ興味を持ちやすくする工夫をしています。異業種交流だけでなく、異世代間交流も生み出したいと考えています。例えば、小中高校生が興味のある仕事をしている人に話を聞くことができ、そのような交流を図れればいいと思っています。

 また、町会や子育てNPO、その他の地域団体と連携した活動を展開しています。川口には地域若者サポートステーションがありますので、今後そんな所にも冊子を置いたりして宣伝して行こうと思っています。

(友田) 独自で事業を実施するよりも他の団体と一緒に事業展開をしていくスタンスを重視しているのでしょうか。

(石井) 学生時代はNPOを繋ぐ中間支援系の仕事をしていました。その時、色々な団体を繋いでも、いま一つ感謝されない&存在感がないもどかしい思いを抱いていました。そこで直接的な活動をやりたかったのですが、やはり中間支援的な機能も果たすことにより、より効果が高まると思っています。町会や企業がいくつか集まったところで、フットサル大会を開きたいとも思っています。

(友田) 当面の目標はどのようなところにおかれていますか。

石井邦知氏写真3

(石井) 地域活性という言葉はあまり使いたくないのですが、住んでいる人、一人一人に居場所、自己表現が出来る場、があることが重要だと感じています。そのことを頭に置きながらスポーツを通じた社会課題解決に向けて積極的に行動していきたいと思います。例えば、単なる異業種交流は飽きている人も多いですが、スポーツであれば一緒にやりたい。国際交流もスポーツという手段を用いることでもっと交流しやすくなります。

 公園では今「ボール遊び禁止」というところが大半ですが、他の人への危険を考慮してリングビーなど柔らかい素材の遊具を使うなど遊び方を工夫すればよい。バレーボールやフットサルでは、男女、世代を超えて参加していただきたいので、女性が得点したら2点とか、被り物をしたら2点とか、ルールを少し変えて工夫をすることで皆が参加しやすく、楽しいものになります。

 また交流だけを謳っても続かないので、外国人が来た時には英語しかしゃべってはいけないチームを作るなど、英語をしゃべるというモチベーションをプラスして集客したりもしています。このような活動の中から次に具体的に進めたいこととして、交流を図りやすくするためにアレンジしたスポーツのルールや実施方法を冊子にまとめたり、公園での遊び方マニュアルを作ろうと考えています。また「ソーシャルスポーツ」の概念を伝えていく勉強会のようなものを実施していきたいとも考えています。

 

◆「ソーシャルスポーツ」を広めるために、ソーシャルメディアで認知度を上げる。

(友田) 参加者のメインターゲットは20-30代でしょうか。

(石井) 最初はそう考えていましたが、意外とFacebookユーザーは40代- 50代が多く、その方達が参加されるとそのお子さんも連れて来ていただけることもあり、10代~50代までまんべんなくという状態になりました。予想外の展開でしたが、いい結果を生んでいると思います。総合型地域スポーツクラブと標榜していますが、総合型というのは種目の総合(=多種目)以外に年齢の幅(=多世代)も意味しています。今後は川口に限らず、他の同じようなベッドタウンにも展開できればと思っています。

(友田) 「ソーシャルスポーツ」を広める上での課題は何と考えていますか。

(石井) 活動のインパクトが分かりにくいことだと思います。活動目的や内容を正確に伝えられていない現状があります。参加者に向けても、社会全体に向けても分かりにくいのだと思います。少しでも解決するにはもっと多様な人材を巻き込んで活動していく事が必要と思っています。FacebookやTwitterは私自身の書き込みが多いですが、もっと参加者自身の書き込みがあると広がっていくと考えています。参加のきっかけは口コミ・紹介が半分以上、Facebookや個人的に何かを見てというのが20%、あとは直接勧誘したりなどです。またこれまでの参加者は400人位(連携した活動を含めれば500人超え)で、そのうち4回以上参加している人は20%位、1回だけまたは2~3回参加してその後来なくなってしまう人が多い、という状態です。

(友田) 1回目から2回目のハードル、2回目から4回目のハードルが高いということですね。要因は把握しておられますか。

(石井) 地理的な問題と他のコミュニティに属しているかどうかが大きいと考えています。全体の参加者の50~60%は川口市内の参加者ですが、残りは他地域からの参加です。また町会やNPO、サークルなど他のコミュニティに属している方も多くいらっしゃいます。中には、既存のコミュニティとうまくバランスをとって継続的に参加していただいている方もいらっしゃいますが、多くの方は地理的な点も含め継続的に参加するというところまでには到らないのだと思います。その他にこちらでまだ正確に把握できていない精神的な距離感という要因もあるのだと思います。

(友田) 川口には2万人の外国籍の方が居住しているようですが、ソーシャルスポーツへの参加もあるようですね。どの国籍の方が多いのでしょうか。

(石井) 欧米の方もいらっしゃいますが、中国、韓国、フィリピンなどアジアが中心です。少しずつ参加がありますが、やはり日本語を話せる人しかまだ参加がありません。

(友田) 『川口deワールドカップ』ができたら面白いですね。地域別とかでもいいですが、国への帰属意識が強い人が多いと思うので、同じ国の仲間とだったら日本語が話せなくても参加する人が多いのではないでしょうか。そうなれば、益々「ソーシャルスポーツ」としての広がりが生まれると思います。

 他に、障がい者の参加はないでしょうか。私の神戸の友人で、障がい者アスリート支援として、ランニングをサポートする伴走をしている人がいます。また、子どもの「かけっこ教室」もしていますが、その友人は障がい者の支援や子どもを支援することで、30歳を超えてから自分のタイムが上ったそうです。もちろん、当事者である障がい者や子どもたちのタイムも上がっているのですよ(笑)。

石井邦知氏と友田景の写真

(石井) タイムのように具体的に成果が見えるといいですね。現状では例えば何か行事を開催して500人が参加したということしか成果として示せていません。成果を上手に可視化できると「ソーシャルスポーツ」が加速していくと感じています。

(友田) まさに弊社が今進めているSROIの評価手法が良くあてはまる事業ですね。SROIとは社会的な効果を可視化していく評価手法です。ソーシャルスポーツに参加して、仕事の相談ができた、友達ができた、親子の会話が増えたとか、そういうものが社会的な効果と言えると思います。SROIはそれを指標化し、貨幣換算化していく手法です。ソーシャルスポーツの成果が分かりやすくなります。

(石井) 地域でどんなに斬新でおもしろいことをやっていても、活動をどれ位長くやっているか、どれ位の人が参加しているか、などで判断されてしまいがちです。今は、直接的に川口市内にアピールすると同時に、埼玉都民である川口市民が大半であるため東京にもアピールして、ブランディングをしていきたいと思っています。

(友田) 成果を改めて整理することで次の課題も見えてきます。「ソーシャルスポーツ」の考え方、活動が広まるには、課題改善を図りながらも継続して、言い続ける事、やり続けることだと思います。

 また、通常企業の社会貢献活動は自社のイメージアップのために独自でやりたがりますが、マイクロソフト社は「若者UP」というNPOと協働のプロジェクトにおいてあくまで黒子に徹し、IT講習を行政が運営する地域若者サポートステーションで実施することにより、より高い効果を得ることができました。同様の考え方で、既存組織があるところに活動をかぶせて展開していく、そういう組方をバリエーション豊かにしていけば「ソーシャルスポーツ」は広がって行くと感じました。

 本日はありがとうございました。

 

※ご講演等のお問い合わせ、石井邦知氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

 

 

  

  

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