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世遊名人対談 第24回 植木力氏 植木力氏写真

■プロフィール

植木 力 氏  株式会社カスタネット 代表取締役社長・社会貢献室長

 1958年京都府宮津市(丹後由良)生まれ。京都府立峰山高等学校の機械科を卒業。戦闘機が好きで、航空自衛隊に入隊。その後、大日本スクリーン製造(株)に入社。工場の購買、開発管理課長など管理系の仕事に従事する。社内ベンチャー制度の第一号にて、株式会社カスタネットを2001年に創業。

 文房具を販売する会社が、中古文房具を回収してカンボジアの小学校に寄贈するボランティア活動から生まれた『21世紀型ビジネスモデル』を全国に展開中。2004年にカンボジア トレア小学校に校舎寄贈。平成16年度(2004年)(財)さわやか福祉財団「勤労者ボランティア賞」受賞。2005年4月ベンチャー企業では日本初の「社会貢献室」を設置し、社会貢献と事業がシンクロナイズする姿を追い求めるため、自ら社会貢献室長に就任する。

 2007年2月町家を改装し「カスタくんの町家」として、企業関係者や学生、住民らが集う拠点として無料開放。社会企業家町家塾などのイベントも行う。2010年8月事務所を移転。それに伴い、「カスタくんの町家」も事務所の隣にある民家に移転し、“ふれあいの居場所”「カスタくんの町家(おうち)」、さらに2012年10月からは、「カスタネット町家サロン~ソーシャルビジネス交流館 京・四条大宮~」二つ目の町家にバージョンアップし、社会貢献活動を展開中。

【著書】
『事業の神様に好かれる法17カ条』 出版/株式会社かんぽう
『小さな企業のソーシャルビジネス ~京都発ソーシャル行き~』 出版/図書出版 文理閣

株式会社カスタネット  http://www.castanet.co.jp/

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2013/3/19)

 

CSR報告書は会社案内だ

(友田) 貴社が発行されている『小さな企業のCSR報告書』を興味深く読ませてもらいました。報告書の冒頭に「障がい者雇用の目標を達成できていません」と御社にとって都合の悪いニュースを前面に押し出されていることに驚きました。その姿勢に非常に真摯な印象を受けました。

(植木) 『小さな企業のCSR報告書』をご覧になれば分かると思いますが、言うならば20ページほどの会社案内です。報告書は大企業のように分厚くないといけないとは思っていません。最初は、A3の紙数ページ分程度でもいいと思います。正直なCSR報告書は中小企業だからこそ作成できるものだと考えています。大企業は大きな組織であり、現場の社員ができていないことは書けません。できていることを膨らませて書くことしかできないのです。中小企業は、活動を率直に書けます。これが真のCSR報告書であると思っています。大企業では世界に株主がいることもあり、CSRの取組に人権問題や環境問題、その他様々な項目を扱われています。中小企業の場合、CSR報告書は利害関係者に渡すものであって、自分たちができることを書けば十分だと思います。CSRは大企業がするものであり、人もお金も時間もない中小企業は、CSRができないと勘違いしてしまったのです。

 各企業は会社案内にお金をかけて作っていますよね。そうしたら、当社のCSR報告書のようなものを作れるはずなんです。会社案内は数年に一度作ったとしても、従業員も手に取りません。会社案内は新規取引先に渡すものなので、更新したからといってすでに配布した会社に渡すわけではありません。CSR報告書であれば既存のお客さんにも配布できる内容だと思っています。従業員が読み、その友人たちにも渡せるようなものでないと無駄ではないかと思っています。

(友田) 確かに貴社のようなCSR報告書を発行している中小企業は少ないですね。最近の学生の就職に関する意識調査などを見ると、その傾向として社会貢献を重視して企業を選んでいるように見受けられます。金銭面などでは太刀打ちできない中小企業にとって、CSR報告書を会社案内と考えれば、その会社の魅力を伝える重要なツールになり、優秀な人材の確保にもつながるのではないでしょうか。

(植木) 素晴らしい活動をすれば、中小企業も大いにチャンスがあると思っています。CSR報告書は大企業からの発行がほとんどです。『小さな企業のCSR報告書』が発行される前に、CSRを研究している専門家から「中小企業のCSR報告書を知らないか」と問い合わせがありました。2年前、事務所を移転するにあたって会社案内が必要となったので、CSR報告書を作ろうとひらめきました。

植木力氏写真1

 ネット上でも実物でもまず表紙を見て判断されるので、中小企業のCSR報告書を探しておられる人に『小さな企業のCSR報告書』はすぐ目に付くようですね。当社の『小さな企業のCSR報告書』はアミタ株式会社が運営するCSRレポートの比較サイト「CSR JAPAN」の2012年アクセスランキングで2位になりました。企業の展示会では、当社のCSR報告書がダントツ一番で無くなります。日本で最も読まれているCSR報告書ではないかと自負しています。

 初版を含めて約1万部発行しました。送料も含めて費用はそれなりにかかっていますが、多くの人に読んでもらえて人脈が広がることが何よりもありがたいです。読んだ方からは多くのメールやお手紙を頂きます。その中には「今まで読んだCSR報告書の中で、これが一番です。」というメッセージも頂きました。嬉しかったですね。

 

「最大限、継続、トップの率先垂範」が、CSR三原則

(友田) 日本の企業は420万社あると言われていますが、そのうち99.7%は中小企業であり、大企業からの流れもありますが、当然CSRを意識される経営者も多いと思います。貴社のCSR報告書を拝見すると、テーマを絞って継続して社会貢献の取り組みを続けていることがよく理解できます。その中でしっかりと課題についても触れられています。

(植木) これは非常に評判です。項目ごとに行動したことを項目ごとに記載していますが、課題も必ず出てきますので、それについても明記しています。これが報告書自体に信用力を持たせているのだと思います。極力数字も出すようにしています。例えば障害者スポーツ支援はどの程度応援しているか分かりやすいように、大会開催の協賛金を開催回ごとに表にしています。

植木力氏写真2

 私はCSR活動を行う上で「CSR三原則」があると考えています。それは、下記の3つです。

①企業にとって、それぞれの現状でできる最大限のことをする。
②企業の体力にあった範囲で継続する。
③トップの率先垂範。

 ①②の最大限、体力とは、お金だけではなく、人、モノ、設備等なども含まれます。②に掲げるように継続できないことは、最初からやるべきではないと思います。私どもは京都で開かれる全国車いす駅伝競走大会を11年前から継続して応援しています。このような継続した活動を通して地域の人からも信頼されていると実感しています。③トップの率先垂範ですが、企業の中には、CSR活動として、朝に会社の周辺の掃除をしているところがあります。私の知る限り、掃除をしている中に経営者は入っていません。社員の多くが「やらされている」という意識ではないかと思います。これは、本来の活動ではありません。特に大企業は、CSR推進部などのCSR部門を組織の一部にしていますが、それを任された部門長は早く成果を出そうと、最小限のことを実践するに留まってしまっているのではないかと思います。

 

社会貢献活動によって、本業が立て直された!

(友田) 貴社の企業理念は興味深いですね。「いつも社会と共鳴する企業をめざし、社会貢献と事業がシンクロナイズする姿を追い求めています。」。「事業」より「社会貢献」が前にきているところが植木さんの思いが強く体現されていると感じました。だから先程のCSRの三原則にある「トップの率先垂範」ができているのだと思います。

(植木) 事業と社会貢献は両輪です。社会貢献を大きくするのであれば、事業の車輪も大きくしないとうまく進まないと思っています。CSRやソーシャルビジネスという言葉が出てくる前から当社はこの企業理念にもとづいて活動してきました。その頃、相次ぐ企業の不祥事により、企業の信頼性が問われることが多くなりました。そのような中で、生まれたばかりのベンチャー企業が実直に活動しているということが評価を上げました。

 実は、当社は創業から2年間は3千万円の大赤字が続き、倒産も覚悟したほどでした。しかし、赤字でも社会貢献活動を続け、カンボジアへ文房具の送付や学校建設などの支援をしていることを知った企業から「どうせ買うなら社会に役立つことをやっている会社から買いたい」と新オフィス移転ためのオフィス機器を丸ごと発注する大きな仕事を頂きました。この案件が代表されるように社会貢献活動が地域のみなさんに理解され、「カスタネットで買ってあげよう運動」が始まりました。そのおかげで翌年から黒字転換をし、借金も返済できることとなりました。

 だから私は中小企業の経営者に社会貢献活動を薦めています。京都は素晴らしい活動をされている企業がたくさんありますが、その活動について情報を発信しない経営者も少なくありません。良いことをするということは、良い社会を創ることにつながります。例えば会社の周りを掃除しているのであれば、それを発信すれば良いと思います。さらに、その次のステップとして、その地域のために一緒に掃除しませんか?と地域の人に呼びかければ、もっと広がるのではないでしょうか。そうすれば、ものすごく社会が良くなっていくと思います。

植木力氏と友田景

 

自分の夢をかなえる一番の近道は、他人の夢をかなえる応援の数に比例する。

(友田) 日本は黙っていることが美徳とする文化がありますが、企業にとってしっかりと情報発信をしていくことは非常に重要ですよね。マスコミなども掲載も信用力につながりますので、企業が地域やNPO、他の企業などへ一緒に何かをしようと呼びかけ、一緒に活動することは非常に重要だと感じています。ですが、そのような取り組みはまだまだ少ないですね。

(植木) 著書『事業の神様に好かれる法17ヵ条』にも書きましたが、「自分の夢をかなえる一番の近道は、他人の夢をかなえる応援の数に比例する」(第17条)と思います。自分のことを成功させようと思う前に、他人のことを助けてあげることで、自分の夢が近づくと思います。会社で言えば、自分の会社だけが儲けようとするのではなく、互いに良くしていこうとする意識がないと良くならないと思います。

 2007年から中京区の町家を借りて、無料開放を始めました。苦しいときに事業を助けてもらった人たちに恩返しをするためです。立地は一等地に近いところなので、「場所貸ししたら収入が得られるのに」と社員からは猛反対されました。場所貸しをしたら、単価×24時間が収入となりますが、それ以上にはなりません。無料だとその価値は無限です。全社員の反対を押し切り、開放を始めたところ、一気に街中に知名度、人脈が広がりました。場所を利用する人から営業情報までもらえるようになりました。当社の従業員はごく少数ですが、従業員以上の営業マン、広報マンができました。このことで、町家という空間で人が集まれば、情報が集まり、その中には営業情報まで集まることに気付きました。そして二年前に、本社に隣接する町家に移転をし、昨年10月から立地条件が更に良くて広い、現在の町家を二つ目としました。今は、自分の経験、失敗談を今後起業する人たちに対して、もっと気楽に語れる“公開社長室”を新たな町家で開催しています。畳の部屋ですので、生徒と同じ目線で話す空間があります。ここからCSRの取り組みやソーシャルビジネスの輪を広げていきたいと取り組んでいます。

(友田) そうですね、人の役に立つことがビジネスの基本だと常々感じています。中小企業の方々は志が高く、CSRという言葉を知らずとも、CSRの要素を捉えた経営をされている方もたくさんおられます。当社ではそのような取組を広げていく支援を続けて行きます。本日はありがとうございました。

 

※ご講演等のお問い合わせ、植木力氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

 

 

  

  

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