HOME > 世遊名人

世遊名人対談 第22回 小池勝也氏 小池勝也氏写真

■プロフィール

小池 勝也 氏  責任ある企業研究所 代表/C(S)Rコンサルタント

 神奈川県横浜市出身、東京都多摩市在住。放送大学卒、多摩大学大学院経営情報学研究科修士課程修了。

 顧客満足度No1のシンガポール航空に10年間勤務、在職中に放送大学卒。1988年には世界ネットワークの地上職における最優秀社長賞「第一回The Managing Director OSG Award」を受賞。 英国の起業家アニータ・ロディックの経営哲学に感銘を受け、自然化粧品チェーン「ザ・ボディショップ」の日本上陸にあわせて独立、日本初の個人フランチャイジーとして参画。その後、阪神淡路大震災の復興プロジェクトなどに関わりながら、多摩大学大学院情報経営学修士課程を修了。

  大学院在学中の2000年にインターネット普及をサポートする株式会社アットパスを起業、米国のベンチャー企業と提携して遠隔操作によるサポート技術を商用化。

 2011年11月に同社を閉じ、C(S)Rコンサルタントとして再独立。現在、上場企業のCSR部へのコンサルティングや、C(S)R普及のためのボランティア活動などに従事。

責任ある企業研究所  http://www.sekinin.net/

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2012/11/29)

 

◆中小企業は、CSRで人材確保を!

(友田) CSRでは、大企業の取り組みがフォーカスされるが、大企業(上場企業)は株主の人数も多く、短期間で利益をいかに確保するかを求められることが強いため、長い目の取り組みが難しいですね。CSR的な考え方を取り入れて一番効果があるのは、中堅中小のオーナー企業だと感じています。株主と経営者が一体となっているので、短期的な利益よりも長期的に安定的な経営に重点をおけるので、地に足のついた取り組みができます。また、ステークホルダーも少ないため大企業よりも成果が出やすいはずです。本当は中小企業こそ、経営としてCSRに取り組むべきだと考えています。

(小池) 企業が持っている社会的な機能や役割は、大企業、中小企業ともに根本的には同じであるはずです。外から資源を調達し、企業で製品やサービスに転換して価値あるものにして世に送り出し、利益を上げる、それが、企業が持つ機能です。

 外部資源を価値に転換する能力の源泉は、従業員しかありません。だからこそ「企業は人なり」という言葉があります。大企業は福利厚生や給料がよいので、比較的能力のある人を集めやすいわけですが、中小企業は知名度もないので、人材募集で苦労している会社も多いのが現実です。そうした時に絶対的な給料の額ではなく、どうやって優秀なやる気のある人を引き付けるかというと、ひとつは社長の考え方や企業が持っているミッションだと思います。CSRなどの難しいことではなく、その会社の一員であることに誇りを持てるような会社であれば、「ここで働きたい」という人が集まりやすくなります。深く考えずに入社した人でも、入社してから「こういう誇れる会社なのだ」と再認識できれば、勤続年数も伸び、働き方も前向きになると考えます。中小企業のCSRは自分たちの仕事に誇りを持てるか、この企業の一員であることに誇りを持ち、彼女、奥さん、旦那さん、友達、子ども、親に「私の会社はこんなことをやっているんだ」という事が自然と話が出来る、そういう魅力が中小企業には必要だと考えます。その魅力を見出す根本な考え方がCSRだと信じています。

(友田) アメリカで、経営者になぜCSRに取り組むのかと聞くと、「従業員のためだ」と明確な回答があります。アメリカでは、日本以上に離職率が高く、ノウハウが流出することによる企業価値の低下が懸念されています。株主志向が強いアメリカでも社員が喜ぶCSRを行うことによって、社員のロイヤリティーを高めている。結果的には小池さんが仰られたことと同じように進んでいます。だがそこまで明確に説明している日本企業は少ないでね。社員視点、従業員視点のCSRが日本企業には欠けていると感じています。

 

◆企業人として問われる二つの質問

小池勝也氏写真2

(小池) 話は少し外れますが、私が最近強い印象を受けたことに、「最高の人生の見つけ方」という古い映画があります。ジヤック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが癌を宣告され余命半年、良くて一年、その中で病室が一緒になった二人が、残された時間の中でやりたいことをリストアップして、それを一つ一つやっていくという映画でした。

 ジヤック・ニコルソンが大金持ちで、金に糸目をつけずやりたいことを二人でやって行くのですが、エジプトのピラミッドの上で、二人が話すシーンがあり、そのセリフが非常に印象に残っています。古代エジプト人は死んで魂が天国に行くと、天国の門の前で二つの質問をされます。その答えによって天国の門が通れるかが決まります。その質問が、「自分の人生に喜びを見い出せたか?」「他者の人生に喜びをもたらせたか?」この二つの質問に「YES」と答えられた者だけが天国に入れるというものです。

 そんな話を二人がするシーンが、非常に印象に残っています。この二つの質問こそが、企業経営(CSR)の原点に通じるものだと思います。「自分たちが幸せになるために、一生懸命仕事をしたか」同時に、「周りの人たちを幸せにするために一生懸命仕事をしたか」経営者は、この二つにYESと言えるような経営をしなければなりませんが、正直に考えたときになかなか両方に「YES」と答えられる人は少ないと思います。しかし、、それを追及することが人間としての生き方でもあり、企業人としての生き方でもあるはずです。「CSRとは」という難しいものではなく、職業人としての原点ではないかと考えています。自分が幸せになることは一生懸命考えるが、それによって同時に他人にも喜びをもたらすという視点が、競争社会の中では見落とされがちな視点です。

小池勝也氏写真2

(友田) 自分と他者への二つの質問ですね。同じようなことになりますが、論語に私が好きな言葉で「忠恕(ちゅうじょ)」という言葉あります。その意味は、「自分の良心に忠実であることと、他人に対して深い思いやりがあること」とあります。そういう姿勢でビジネスをしていく事が重要だと思っています。自分の良心と他人への深い思いやりの両方を持ち合わせることが出来れば、競走社会のなかでビジネスを続けることが出来ると考えています。多くのビジネスマンや経営者にジレンマがあると思いますが、目の前の利益を上げなければならない、利益を残さなければなりません。その中で、いかに誠実で真摯な経営をしているかとの折り合いが難しいと最近痛感しています。

 それにCSR的な経営は、まだまだマイノリティだと思っています。これが果たしてマジョリティになるのか、そういう転換が出来るのかというのは、自分自身でCSRに取り組みながら懐疑的に見ています。だた、その転換をしないと、日本という国が基本的に人口減少で、特に内需なドメスティックなビジネスをしている企業は、物やサービスが売れない状況にある中で、多くが機能不全に陥ってしまうと感じています。

(小池) 確かにCSRが根付くのかは懐疑的な部分もあります。大きな方向転換を生みだす一つのエネルギーは、企業ではなく消費者だとも言えます。CSRの「C」はコーポレートという意味もあるが、コンシューマーという意味もあると思っています。ヨーロッパなどのように消費者の社会的責任というものがこれから一層求められてくるはずです。企業を変えるには企業の自助努力も必要だと思いますが、消費者がパワーを持つことにより、そんな商品は買わないという「NO!」を突きつければ、企業も変わらざるを得ない。そういう動きも合わせて作っていく必要があります。

(友田) そうですね、消費者や生活者側も勉強し、考え方を改める必要があると思っています。企業だけがCSRに取り組むという問題ではありません。全ての責任を企業に押し付けるのは明らかに無理があると感じています。

 

◆CSRは、「SR」と「CR」に分けて考えよう!

(小池) CSRという言葉が生まれたことの功罪のようなものがあり、CSRの「S」である、「ソーシャル」が含まれてしまったが為に、企業が外面ばかり良くしようとする傾向があります。言葉に引きずられている部分がある。CSRは「SR」と「CR」に分けて考えると良いと思います。持続可能な経営や持続可能な社会という事がCSRの文脈で語られますが、それをどこまで真剣に本気で考えている経営者がいるのかは疑問です。持続可能と言った時に、どの位のスパンでイメージしているかは曖昧です。本当に自分たちが持続可能な社会を営もうとすれば、1社だけで取り組める問題ではない。それは「SR」の問題として、社会的な課題として同業他社やサプライチェーン全体、さらに異業種で協力するなど、なるべく多くの人達が協力して「SR」の問題を解決しようという動きを作らなければなりません。

 「CR」では、自分たちの経営の質をいかに高めていくかが重要です。例えば、某宅配業者は今回の震災復興の支援で非常に良い取り組みをして、社会的な評価も高まりましたが、その反面、ニュースで、ある営業所長の残業が放置され、過労死に対して労災が認定されたと見聞きしています。社内でそういうことが起きてしまうと、社員からは「自分たちの会社は外面ばかり良いが、自分たちの事は顧みてくれない」という不満が高まります。社員にそのように思わせてしまう事は、企業にとっては大きな損失だと思います。「CR」と「SR」の問題は、戦略的に分けて考える必要があります。特に上場企業(大企業、グローバル企業)ほど「SR」に取り組むパワーがあるので、他社を巻き込みリーダーシップをとる企業が増えて欲しいですね。中小企業は「CR」にエネルギーを割き充実を図ることが重要だと考えています。

小池勝也と友田景

(友田) CSRを含む社会的責任の規格であるISO26000は、重要度の設定がポイントだと考えています。それぞれの企業として業種、業態によって課題は違うはずで、どの課題にフォーカスし取り組んでいくかを明確にすることが重要です。ISO26000の良いところは、第三者認証ではないことで、自社にとって、適切なものをきちんと設定し、取り組みなさいということを示しています。そのことから、自社の理念や考え方、そこからくるアクションが明確になっていること。つまり、金太郎あめのように、どこも同じは認めないということだと理解しています。国も文化もルールも違えば、取り組みも変わるが、それに応じでやりなさいということになります。自社として何をすべきかを突き詰めて考えなければならず、だからこそ本質的で、だからこそ難しいと感じています。

(小池) そうですね、企業である以上、全ての社会的課題を引き受けるのは不可能です。「一隅を照らす人間になれ」という言葉を道徳の時間に教わりましたが、自分たちが存在することにより、何か一つでも世の中が良くなれば素晴らしいことだと思います。ISO26000で挙げられている課題全てを解決する企業になれという事ではなく、自分たちが持っている強みを、どういうところに活かせるのか、企業としての自分たちは、従業員にとって、顧客にとって、社会にとって何者かということをCSRとして全社的に追求していけば、おのずと企業としての存在意義は大きくなると思っています。

(友田) 小池さんとお話させて頂いて、よりCSRに対する考えが深まりました。改めてこれからも組織経営としてのSRを追及していきたいと思いを強くしました。本日はありがとうございました。

 

※ご講演等のお問い合わせ、責任ある企業研究所、及び小池勝也氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

 

 

  

  

スタッフ・ブログ 世遊綽々 ソーシャルアクション 社会の潮目
世遊名人対談