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世遊名人対談 第19回 NPO法人Homedoor 理事長 川口加奈氏 川口加奈写真

■プロフィール

川口 加奈 氏  NPO法人Homedoor 理事長

 1991年大阪市生まれ。14歳の時にホームレス問題と出会い、以降ホームレス問題に関わり様々な支援を開始する。その後、日本で最もホームレス問題の研究が進んでいる大阪市立大学へ進学。現在、4年生。昨年度、活動を進化させるためにNPO法人Homedoorを設立する。
 「大学生OF THE YEAR2011」初代グランプリ、「CVG」経済産業大臣賞受賞、「edge2012」最優秀賞受賞、など社会起業家としての賞を総なめにし、マスメディアからの掲載も多数ある今、注目の女子大生社会起業家。
 

NPO法人Homedoor  http://www.homedoor0.com/

HUBchari  http://www.hubchari.com/

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2012/6/12)

 

◆中学生のときにホームレス問題に目覚める。

(友田) 川口さんは、中学生の14歳の時からホームレス支援の活動をされているそうですが、そのきっかけは何でしたか。

(川口) “釜ヶ崎”の炊き出しの参加募集のポスターを目にして、参加したのがきっかけです。親からは通学経路にあった日雇い労働者やホームレスが多い地域である“釜ヶ崎”には近づくなと言われていたため、「部活にいってくる」など言って内緒で参加していました。炊き出しに参加してみると、ホームレスの人たちに偏見をもっていたことに気づき、今まで何もせずに“申し訳なかった”という思いになりました。

(友田) ホームレスを社会問題だと感じる人は多いでしょうが、“申し訳ない”と感じる人はほとんどいないと思います。川口さんは、なぜ“申し訳ない”という思いを抱いたのですか。

(川口) 今日の自分達の生活があるのは、高度経済成長期に頑張ってくれていたこの人たちのおかげなのに、社会のゴミとして扱われ、私たちと同年代の人がホームレスの人達に対して、意味もなく暴力を振るう事件が起きていました。毎朝通学で、釜ヶ崎を目にしていたのに、「何で今まで気づかなかったのだろう」という罪悪感が生まれました。周りの人から聞いたことだけで判断していた自分自身が悔しくて、自分は今まで何をしていたんだろうと思うようになりました。今、私が何もしなかったら、ホームレス状態になった“おっちゃん”たちが亡くなってしまうのではないかという強迫観念に駆られました。

(友田) そもそもホームレス問題に取り組む人が少数派であって、その中でもまず“強迫観念”まで持って問題に取り組んでいる人はいないのではと思いますが、何がそこまで川口さんを動かすのでしょうか。

(川口) 中学・高校生の時の気持ちは、今はよく覚えていませんが、今の私にとっては、やるのが当たり前という感覚です。なので、外部の何かに動機付けられることはありません。動機づけがなくても、ご飯を食べるようにそれが自然で当たり前の感覚なので、仕事をやることも苦ではありません。

(友田) 川口さんのお話から、“社会に対する帰属意識”が非常に強いように感じます。最近でこそ、東日本大震災の影響もあり、寄付やボランティアなどを通じて、社会問題に対して支援をする人が増えていますが、川口さんとは本質的な部分で何か違うような気がします。川口さんが持っている“社会の一員だから”という意識の根源は何ですか。

川口加奈氏 写真1

(川口) 社会に対して何らかの貢献するのが当たり前と思っている部分があります。私は、14歳の時にホームレス問題と出会うまでは生きている意味を見つけられずにいました。私が生きていること自体が悪なのではないか。生きていることで二酸化炭素量を増やし、親から学費まで払わせている迷惑な存在だと感じていて、自殺を考えるほど思いつめていました。

 今はそのような考え方が変化し、自分が社会を少し変えることでみんなが苦しむことなくい社会を作れるのではと考えるようになりました。そのためにNPO法人としてHomedoorを立ち上げ、現在「HUBchari」という事業をスタートしています。私にとってHomedoorは、自分自身の存在意義を社会に示すひとつの挑戦なんです。

 

「こんなんあったらええなと思っててん!」利用者の一声が、起業への腹を決める。

(友田) そうすると、大学卒業後は、最初から起業することを決めていたのですか。

(川口) 実は、私自身起業する気は全くありませんでした。当初は3人で、任意団体としてHomedoorを立ち上げ、活動を始めました。大学を卒業したら社会人としての経験を積むためにも一度は就職するつもりでした。ある程度経験してから本格的に取り組む道もありかなとは考えていますが、在学中から生業として立ち上げることになるとは活動当初は全く頭にありませんでした(笑)。

ハブチャリマップ

事務所の「HUBchari」マップ

 当初メンバーの3人のうちの一人が起業に興味があり、彼が「どうせやるならちゃんとやろう!」といつの間にか起業塾に応募していました。起業塾はかなりハードだったため、残念ながらそのメンバーは離脱することとなってしまい、起業にあまり興味がない2人が残りました。もう一人のメンバーは就職することを決めていたこともあり、私も就職を考えていました。

 そんな中、2011年7月に「HUBchari」の実証実験を行うことになりました。今までは生活保護受給者やホームレスの人からの要望(働きたい、こんな場所があったらいいなど)は聞いていましたが、その時初めて彼ら以外の利用者になる市民の方からの声を聞く事ができました。「こんな場所があったらええなと思っててん!」とひとりのおっちゃんが言ってくれたんです。私たちの活動はホームレス、生活保護受給者の方だけではなく、利用者となる市民にも少しはプラスになることなのかもしれないと思い、自分自身の中で就職する必要性を感じなくなっていました。

 「自分が社会に貢献できる場がここにもあったんだ」と実感し、「HUBchari」を正式に事業を遂行していくことを決めたんです。起業当初は1人でしたが、私につていきてくれる後輩もできて、2011年11月のプレオープンのため着々と準備を進めていきました。

 

◆「HUBchari」で、大阪市の二大問題の生活保護と放置自転車を同時に解消する!

(友田) では、その「HUBchari」の事業内容を教えてください。

(川口) 自転車を配置した拠点(ポート)を設けて、自転車の貸出しを行っています。利用者が事前に携帯やパソコンで利用情報の登録を行うシェアサイクル(月額735円、日額210円で、1回30分まで。30分を超過すると以降30分ごとに100円)と登録なしで利用ができるレンタサイクル(700円/24時間)があります。

 現在自転車を配置しているポートは、大阪市内のホテル東急イン(大阪市・北区)、ホテルみかど(大阪市・西成区)、「HUBchari」運営事務所(大阪市・中央区)の3ケ所です。4/24~27には大阪ガスビルに協力して頂き、期間限定でオープンしていました。利用者の方はどこのポートで借りても返しても良いシステムになっています。観光客やビジネスマンの方など様々な人に利用してもらっています。4月にはお花見をする人たちなどで多くの利用がありました。

 「HUBchari」は、大阪市の二大問題である生活保護問題と放置自転車問題の解決を目標に始めました。迷惑駐輪や放置された自転車を回収、修理し、「HUBchari」として再利用し放置自転車問題の軽減を目指しています。現在は、とある企業、団体の方のご好意でブリヂストン製の自転車を100台もご提供して頂き、その自転車を利用させてもらっています。また、元ホームレスの生活保護受給者の方をスタッフとして雇い、自転車の修理や拠点の見廻りをしてもらうことで雇用の創出を図っています。

(友田) 生活保護問題と放置自転車問題を同時に解決しようとする発想は非常に面白いアイディアですね。「HUBchari」の今後の展開を教えてください。

(川口) 「HUBchari」はまだ立ち上げ段階ですが、1年後には現在3ヶ所の拠点を30ヶ所に増やしすことを目指して頑張っています。まずは先日(平成24年6月8日)に協定を結んだ大阪市住吉区で、8月から実証実験を行います。行政とは、住吉区でロールモデルをつくって、横展開していきたいと考えています。民間でも今月も新たに3ケ所で拠点のポートとしてOKがもらえそうです。

 「HUBchari」は利用者が限定されていないビジネスモデルですので、メディアなどに取り上げられ話題になりやすく、好機がつかめるのではないかと感じています。私が女子大生ということもあり比較的注目されやすい今の時期が勝負だと思っています。今年度中に事業として軌道に乗るように基盤をつくってことが目下の目標です。

 そのためには、「HUBchari」の他でも利益を生み出せる仕事を考えています。今は「HUBchari」の拠点となるポート先へおっちゃんたちが週2~3回見廻りしてもらっていますが、おっちゃんたちがポート先で何か常駐しながら稼げるものがないかと思っています。まずは、その一環として試行的にレンタル傘を置いています。現在120~130本を寄付でいただいており、自転車と同様貸出しできればと思っています。

川口加奈氏 友田景 写真

(友田) 川口さんの真っ直ぐな思いに寄付してくれる人などの応援団も増えてきているのですね。「HUBchari」も事業として目処が立ってきて、「Homedoor」としての活動も順調だと言っていいのでしょうか。

(川口) まだまだなところばかりですが、少しずつメンバーもそろってきました。今は学生8人で、私と事務局長以外は半年期限付きのインターン生です。組織としては、足りないものだらけで、特に経営経験がある人材の必要性を感じています。今後の計画を長期的な目で戦略立ててくれる人のサポートが欲しいです。現在でもアドバイスしてくれる人はいますが、多忙な方が多いためリアルタイムで相談するのがなかなか困難です。また、事務作業含め私が内部にいる時間が多いので、なるべくもっと外に出てビジネスチャンスをつかんでくる時間を増やしていきたいです。

(友田) 組織としては、まだまだスタートの段階ということなんですね。川口さんには是非、大きなビジョンを持って、取り組みを進めて行ってもらいたいです。地元大阪に新たなスターが生まれてきたことに大変うれしく思っています。本日はありがとうございました。 

 

【軒先を貸して下さい!】大阪市内で「HUBchari」の拠点ポートとなる自転車の置き場所を探しています。自転車3台程度止められるスペースがあれば十分ですので、大阪市内の方、是非、よろしくお願い致します!

 

※ホームレス支援についての講演などNPO法人Homedoor、及び川口加奈氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

 

 

  

  

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