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世遊名人対談 第18回 『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会 代表 阿真京子氏 阿真京子氏 写真

■プロフィール

阿真 京子 氏  『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会 代表

 1974年東京都生まれ。アジアとの架け橋となるべく、マレーシアの国立大学にて日本語講師、外務省外郭団体にて国際交流に携わる。その後、夫と飲食店を経営。
 2007年4月、医師とお母さん達との架け橋になるべく『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会を立ち上げた。現在7歳、5歳、2歳三男児の母。
 厚生労働省医政局看護課「看護教育の内容と方法に関する検討会」委員、厚生労働省保険局「第38回社会保障審議会医療保険部会」専門委員、東京消防庁「第30期東京消防庁救急業務懇話会」委員、東京都福祉保健局「東京都小児医療協議会」等を歴任。

『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会  http://shirouiryo.com/index.html

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 木村 祐子)

(掲載日:2011/12/6)

 

◆寝ないで24時間働き続けるパイロットの飛行機に子どもを乗せたいですか?

(木村) 『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会では、子育て中の親向けに小児医療の基礎知識について学べる講座を開催されていますね。

(阿真) 親が子どもの病気についての知識を持つことが、育児不安の軽減や、小児科医の負担の軽減につながる、と考えています。講座では、小児科の先生に子どもの病気やその対処法、予防接種などについて分かりやすくお話していただいています。当会主催の講座のほか、自治体やママサークルとの共催講座も行っており、4年半の間に東京都を中心に47回の講座を開催し、延べ約2,000人の方々に情報をお伝えしてきました。

(木村) 会を立ち上げたきっかけは何でしたか。

(阿真) 長男が9か月の時に45分間も痙攣を起こして救急搬送されたのですが、その時の病院の待合室は、軽症の子と重症の子が入り乱れていて大混乱していました。親達は早く自分の子を診てもらいたくてパニック状態、先生や看護師さん達は忙しく対応されていました。その光景を目のあたりにして、「小児医療の現場で何か大変なことが起こっている」と感じました。

 その後しばらく経って、小児科医の友人からのメールに「寝ないで24時間働き続けるパイロットの飛行機に子どもを乗せたいですか」と書かれていて、過酷な小児医療の現場の状況を知りました。また、救急で来院する小児患者の9割以上が軽症である、という厚生労働省の報告を読み、「私も含めて、お母さん、お父さんが子どもの病気について知らなすぎる。」と思いました。

(木村) 子どもが小さい時は病院にかかることがとても多いのに、医療について学ぶ機会はほとんどないですね。

(阿真) そうですね。会を立ち上げた4年半前は、インターネット等で調べても子どもの病気を知る講座は何もありませんでした。

(木村) 社会の中で何かしら問題意識を持つことはあっても、阿真さんのようにその解決に向けて一歩踏み出すというのは難しいと思うのですが、最初に取り組まれたことは何でしたか。

(阿真) この「『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会」という名前で、2007年4月にブログを始めました。最初の講座はその年の10月で、企画から講師依頼、会場手配、告知まで全部一人でやりました。翌年3月に朝日新聞で取り上げられたことをきっかけに、新聞、テレビ等で取り上げられるようになってきました。

阿真京子氏写真

(木村) 「啓発」という名のもと、行政から色々な情報を提供されても、何だか御仕着せのように感じてしまい、市民には上手く伝わらないことがありますね。阿真さん達のような団体が間に入って「翻訳」してくれることで、私達の中にすっと入っていくように思います。講座の開催のほか、どのような活動をされていますか。

(阿真) 毎月1回メルマガを配信しており、子どもの病気についての情報提供や医師、看護師によるコラムを掲載しています。また、総務省消防庁が救急車の利用マニュアルを作成するにあたり、会として意見を求められたことがあります。校正段階でかなりのダメ出しをしたのですが(笑)、私達の意見を取り入れて頂き、皆さんに手に取っていただけるような分かりやすいものが出来たと思っています。

 

医療、行政、保護者・・・目的は一緒。小さな命を守りたい。

(木村) 会員は何人位いらっしゃいますか。

(阿真) 会員は88名、協力医は33名です。会員数は一時150名位まで増えましたが、年会費を取ることにしたため半分になってしまいました。でも残っている会員の方は、会の活動趣旨をより理解して関わってくれていると思っています。

 会員のうち5名が事務局としてコアな活動に関わり、25名がブログやメルマガの更新などの活動をしています。それぞれの年間作業量に応じてスタッフ活動費を支払う仕組みです。そのほか寄附会員もいらっしゃいますし、会員でなくても、講座の受講はできます(講座によって受講料は有料)。

(木村) 会として大切にされていることはありますか。

(阿真) この会は、みんなが手を取り合って子どもの命を大切にしよう、という趣旨で活動しています。国や自治体、医療機関を批判するのではなく、みんなで一緒に今ある問題を解決していこうというスタンスです。協力医の先生方も、お母さん、お父さんの気持ちに寄り添ってくださる素敵な先生ばかりです。

 先日、厚生労働省から母乳の放射能検査の依頼があり、私達の会員数人のサンプルを提出しました。信頼関係が築けているからこそ、国からそのような依頼があるし、検査結果のデータもきちんと返してくださるのだと思っています。

阿真京子氏 写真

(木村) 活動されている中で、どのようなサポートがあるとよいと感じますか。

(阿真) 会のリーフレットに大塚製薬工場の経口補水液OS-1の広告を掲載していて、リーフレットの印刷費を大塚製薬工場さんから助成していただいています。企業のこのようなサポートは非常に有難いです。

 助成金の多くが、講師謝金や会場使用料等、用途が決められていて、スタッフの人件費には使えないルールになっています。一部でも人件費に回せたら、運営はとても楽になると思います。そういう意味で、「メスキュード医療安全基金」からいただいた活動費は、柔軟に使えてとても有難いと思いました。これからもこのようなチャンスがあれば挑戦したいと思っています。

 それから、講座の時に託児をお願いするのですが、こども未来財団に申請すると託児の費用を全部出してくださるようになりました。これも非常に助かっています。 

(木村) 阿真さんは、個人としても厚生労働省や東京都福祉保健局等の委員会で委員をされていますね。

(阿真) お母さん達の生の意見を、出来るだけそのような場に届けるようにしています。委員をお引き受けしたら、私はそのテーマについて医師や助産師、お母さん、お父さん・・・その時々で現場のひとに意見をたくさん聞き、情報も収集して、発言するようにしています。ですから、事務局の方が「当事者代表として、そこにいてくれればいい」と考えられている委員会では不評です(笑)。委員会の度に積極的に手を挙げて発言してきたことで、少しずつ私という人間を理解していただけるようになりました。

 

◆医療機関の中で医者と患者の間を取り持つ人材を育成する

(木村) 今後、会としてどのような展望を持っていらっしゃいますか。

(阿真) 全国どこでも子どもの医療について学べる環境を目指して活動していますが、最終的には医師の負担が減り、医療現場が落ち着いていく事を目指しています。

 会の活動とは別になりますが、先日、内閣府iSB公共未来塾に私達が提出したビジネスプランがコンペで採用されました。医療機関の中で医者と患者の間を取り持つような人材を育成する、というものです。こちらは小児だけではなく大人の方も対象にしています。来年1月から埼玉県の栗橋病院で始める予定です。

 設立当初から、小児医療の方の活動は全部で10年と決めていて、あと6年経ったら次の人にバトンタッチするつもりです。我が子の成長と共に小児科にかかることは少なくなります。この活動は当事者としていかに切実に関われるか、ということが大事だと思っています。

(木村) 阿真さんは『東京里帰りプロジェクト』の世話人もされていますね。こちらの会についても教えてください。

(阿真) 東京都助産師会が主催しているプロジェクトで、被災地から東京へ避難を希望する妊産婦さんを受入れ、安心して出産・産前産後の生活を送っていただくためのサポートをしています。これまで74名の妊産婦の方を支援し、現在19名の方を支援をしています。大半が福島の方で、出産後お父さんは福島に残り、母子は東京に住むことを希望されています。上の子どもがいるから一緒に避難してきた、という方がほとんどです。

 私の持っている様々なネットワークを使って、住居探しや、上のお子さんの学校や保育園の手続きなど、生活に寄り添ってサポートしています。

 あるお母さんと一緒に保育園の申請に行った時に、区役所の窓口の人から「この区にはあなたよりもっと大変な人は沢山いるのよ。」と言われたことがあります。あまりにも切なくなって、区役所を出た後、そのお母さんと一緒に泣きました。東京にいた方がいいのか、帰る方がいいのか、どちらが正しいかは分からないけれども、先ずは本人の意思が尊重されるべきだと思います。本当は住み慣れた土地に帰りたいのに帰れず、ご主人とも月に1~2回しか会えない状況なのです。

阿真京子氏と木村祐子の写真

(木村) 私達に出来ることはありますか。

(阿真) 皆さんの寄附が活動を支えています。来年3月末で妊産婦の受け入れ自体は一旦終了しますが、その後は子育て支援事業として、妊産婦さんとご家族の支援を継続していきます。詳しくは、下記のホームページを見ていただけたら、と思います。       

『東京里帰りプロジェクト』 http://www.satogaeri.org/

(木村) 三人のお子さんのお母さんでもある阿真さん。元気の秘訣は何でしょうか。

(阿真) 主人と子ども達が活動のことを理解してくれ応援してくれています。休日に仕事に出かける時には「お仕事がんばって!」と家族みんなが大きな声で見送ってくれます。長男も「ママが頑張ってお仕事している姿を見るのが好き」と嬉しいことを言ってくれるようになりました。忙しくても子どもがいると元気が出ますね。

(木村) 阿真さんの温かな笑顔の周りに沢山の方が集まって、活動の輪が広がっているのだと思います。今日はありがとうございました。      

 

※小児医療についての講演など『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会、及び阿真京子氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

 

 

  

  

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