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世遊名人対談第16回特定非営利活動法人アンガージュマンよこすか 副理事長 島田徳隆氏 width= アンガージュマンよこすか 島田徳隆氏

■プロフィール

島田 徳隆 氏  特定非営利法人アンガージュマン・よこすか 副理事長 事業部長 学習支援担当

 1973年横須賀市生まれ。県立横須賀高等学校卒業後、大学を7年かけて卒業する。卒業後は、測量事務所での勤務を経て、タートル学園WILLでの訪問相談員、横須賀市青少年課非常勤職員として勤務した後、特定非営利法人アンガージュマン・よこすかにて勤務し、現在に至る。

 現在は、NPO法人神奈川子ども未来ファンド運営委員、上町商盛会商店街振興組合会計、横須賀三浦半島を元気にするプロジェクト会計なども兼務している。

特定非営利法人アンガージュマン・よこすか  http://engagement.angelicsmile.com/

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2011/10/4)

 

◆元ひきこもりが運営する本屋さん

(友田) 「アンガージュマン・よこすか」とはどのような組織ですか。

(島田) 不登校の子ども達やひきこもり支援のNPOとして立ち上がりました。元々は適応指導教室という教育委員会がやっていたものを親の会が母体となって、子どもの居場所を民間で作ろうとなったのです。理事長と当時の商店街代表が意気投合し、理事長と大家さんが友達だったこともあり、商店街に場所を借りることができました。

 基本的に活動の中心にあるのが子ども達の居場所であるフリーススペースです。その他学習支援、相談・カウンセリング、就労支援、就労支援の一環として「はるかぜ書店」という書店を経営しています。利用者は登録者が20名程度、通常来ている子は10名程、小学生から20代半ばまでが利用しています。組織の特徴としては、本屋を経営していることと、地元である横須賀上町商店街との関わりに大きなポイントがあります。

(友田) ひきこもり支援がなぜ本屋を経営することになったのですか。

(島田) 就労、社会参加をしていくために販売士の勉強をしているのですが、研修の現場があるといいよね、という軽い気持ちで事業を検討していたところ、県の補助金を取って始められていた福祉系の本屋を引き継ぐことになりました。ひきこもりの経験者だけで、本屋を経営する暴挙に出たわけですが、本屋の運営のいいところは、まず値段を決めなくていい、流通経路も決まっている、その辺りが素人でもやりやすいのです。またひきこもりの人達は本好きが多く、「本屋をやるのなら」と言って入ってくる人も沢山います。本を純粋に好きだ、というのをもっと積極的に出していければよりユニークな書店になると思います。

 不登校、ひきこもりの人にとって一番いいのは人と関わって行く事、日常的にコミュニケーションをする事で、そのため街の真ん中でやることも大事と考えています。

(友田) ひきこもりの人が社会参加をするためにお店をやるのは面白い取り組みですね。

(島田) ひきこもり経験者が社会参加していく場合に、いきなりコミュニケーションをしてみようと社会の一般的な場所へボンと入れてみる、そういうのも一つの方法としてある、そして接客という手段は決して間違っていない、と思っています。大きな書店とは違いお客さんのほとんどは商店街を利用するみなさんなので、実はお客さんの方が接客スキルは高く、こちらがまごついていると「いいのよ」と優しい声を掛けてくれます。決してレベルの高い接客ではありませんが、ここではそれが許される空気があります。

(友田) そこまで行ける子はいいですが、ひきこもりの子が街の中心部に出てくるのは難しいことではないですか。

(島田) 僕らはこちらから働きかけをしないので、自分からやってこられる段階の子です。そういう子は既に一歩踏み出している、大丈夫な子と言えます。とはいえ、いきなり普通に働ける状態ではないわけで、働くまでの期間をトレーニングする場になっています。また親が無理やり連れてくる場合も多いのですが、来てしまえばかなりの確率で変わっていきます。学校以外で自分を認められる、空間や時間があればいいのです。正直なところ、本は売れなくて本当に大変な状況なのですが、本の販売を通じて色んな体験をしてほしいのです。

 

◆地元商店街のゆったりとした空間で子どもが育つ。

(友田) もう一つのポイントである商店街との関わりについて教えてください。

島田徳隆氏 写真

(島田) 商店街が店舗を借り上げて家賃を助成してくれました。当時の商店街の会長は大変に懐の深い人で、私達の活動に尽力してくれ、商店街を上げて受け入れ「アンガージュマンと一緒に何かやって行こう」と言ってくれました。商店街としては担い手不足ということもあったので、その辺りをアンガージュマンに期待され、そのことは若者の体験になりました。僕自身も受け入れられている感じがあります。

(友田) 商店街の肝入りみたいな感じで始まったわけですね。

(島田) 最初、商店街全員の一致で受け入れた、と聞きましたが、実はそれは違いました。商店街の真ん中で空き店舗は良くないので何でも受け入れて行こう、そう説得したそうです。

 商店街の人達と「一緒にやって行こう」と泥臭い感じで始まったので、他の同様なNPOをやっている人達の中では異質な感じで注目されてきました。教育、福祉、医療、などを理念としてやっている団体はたくさんありますが、私達にはそういう雰囲気はない、高らかに理想を掲げるようなとっつきにくさや、今まで活動してきた他のNPOが獲得してきたような気概はなく、肩の力の抜けた感じです。他のNPOからは単なる酒飲み集団とも思われています(笑)。

 若者に聞くと「ここでは何をやっているかわからないが、とにかく居心地がよい、そういう場所である」と言われます。彼らの居場所になっています。現在の社会のスピードと同じではないが、確実に前進している。設立して7年目ですが若者達が育っている実感があります。

島田徳隆氏と友田景の対談風景の写真

(友田) 近所の人と出会って、挨拶して、井戸端会議をして、ゆったりとした時間が流れていく。そんなよき昔の商店街が残っているのですね。「NPO」だ、「コミュニテティビジネス」だという横文字が似合わない、そんな感じですね。

(島田) そうですね。横須賀市上町と言う所は、ゆっくりとした時間が流れていて、そういうお客さんに若者達が育てられる。商店街の役員も70代前くらいで、温かく見守ってくれている。それが日常的でリアル、そのことを若者は肌で感じています。はるかぜ書店のスタッフは商店街のおじちゃんおばちゃんとの関わりが大きいのです。

 また上町商店街はおかみさんのネットワークが強い街で、いつもおかみさんが街をうろうろしています。おかみさんたちは対人関係に慣れているので、感覚的に人に対してここまでは言ってもいい、というコミュニケーションのラインを分かっているのだと感じます。

(友田) いつも見守られている、気にかけてくれている、温かさを感じますね。

(島田) 商店街がずらっと並んでいるところを行ったり来たりするのには安心感があります。お店が開いていて、食べ物のにおいがしたり、生活を感じるのは帰って来たなと思えますよね。

 おそらくアンガージュマンの子ども達は、その後ここを出て色々な所に行きますが、ここにはホームタウンがある、こころの拠り所がある、そのことが私達のやっていることで一番大事なことだと思います。存続の危機は常にありますが、居場所を続ける意味はそこにあると思うのです。

 

◆NPOで働くこと

(友田) 話は変わりますが、島田さんはいつからアンガージュマンに関わったのですか。

(島田) 学習支援では1対1の授業が1時間半行われるのですが、最初はその講師として手伝い始めました。当時はフリーで関わっていたのですが、2006年からフリースペースの担当者ということで専任になりました。

(友田) NPOで働かれてどのようなことを感じておられますか。

(島田) 社会の中で色々な人達を受け入れてやって行っていたのが機能しなくなったのを感じます。発達障害の場合など能力の秀でている点を活かしてどうやっていくのか、昔は釣りバカのはまちゃんが会社に居ました。それぞれの個性を活かしてあげられる、それには時間とコストがかかる。こういったケースは僕らNPOが見るだけではなく、本来社会全体で見なければならないと思っています。

 私は教員養成の学校出身ですが、就職氷河期で教員になれない時代でした。当時からこんなに採用を減らして10年後、どうなるのかと思っていたら現実に今困っています。学校の現場では人がいないから病気になりながらでもやっている。友人の教員を見ていても可哀そうだと思います。色々な人を受け入れるというのは、社会や会社がやっていくことだから、それが機能し始めれば僕らは必要ないのだと思いますが、でもまだまだ変わらないでしょうね。そういう時代の中で決して積極的な選択をしたわけではなく、時代の流れで、NPOで働いている感じがします。

(友田) 私の場合は、高校3年生のときに95年の神戸大震災があり、ボランティア活動をしたのが市民活動への関わりのはじまりです。その後98年にNPO法が施行され、友人がNPOを立ち上げるなど自然な流れではあったものの、自分自身はNPOで働く選択をしませんでした。しかし今の20代は、積極的にNPOで働きたいという人が結構いますよね。

(島田) 若い子に接すると感覚的に「何か違う」とはよく感じます。社会貢献をしたい気持ちに嘘はないだろうし、NPOで働くこともいいんだけど、その代わりに色々なものを犠牲にすることもちゃんと考えた方がいいよ、と伝えたいです。

島田徳隆氏と友田景のツーショット写真

(友田) 今は社会貢献がある種「ブーム化」しているのだと思います。NPOには頑張ってもらいたいと当然ながら思っていますが、安易にその選択をして欲しくないと思っています。ちょっといいことをしたいのなら週末のボランティア程度にとどめておく方がいい。NPOを立ち上げる、NPOで働く、ということは社会の変革の原動力になるという覚悟と自覚を持って欲しいなと思います。現実は、給料は安いし、休みもない、そんなNPOが多い実情をちゃんと理解して、選択してもらいたいものですね。

(島田) 大学で講義する機会がありますが、そのような事を学生に伝えてやってくれとよく言われます。腹を括って飛び込んでくるような子は大切にしなければいけないが、やりがいだけではやってはいけません。他のNPOの方も、みんな同じ想い、共通なのかなと思っています。

(友田) 基本的には2タイプに分かれると思っています。ヒステリックな感じで社会問題と捉えてこれを何とかしなければならないと考えているタイプはあまりうまくやっていけない。ある程度楽しんで前向きにとらえてやっている人はうまく行っていると思います。      

(島田) 分かる気がします。日々のことなのでヒステリックでは保たない。多くの人に理解してもらうには、攻撃的であったり、挑発的であるよりは力が抜けていた方がいい。僕は抜けすぎている感じですが。

(友田) 楽しそうじゃないと人は集まってきませんが、想いだけでは難しいですね。

(島田) そうですね。これからも肩肘張らずに自然体で、楽しみながらやっていきたいと思っています。

(友田) 世の中に広がっていくことは至ってシンプルだと思っています。NPOが益々広がっていくには、島田さんのように自然体で楽しみながらやっていく人が増えることが重要だと改めて感じました。本日はありがとうございました。

 

※講演などアンガージュマン・よこすか 島田徳隆氏へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

 

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