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    世遊名人対談 第14回 高巌氏 高巌教授写真

    ■プロフィール

    麗澤大学 経済学部長  高 巌 氏

     早稲田大学大学院商学博士。ペンシルバニア大学ウォートンスクール客員研究員、麗澤大学の講師、教授(九州大学ビジネススクール、早稲田大学大学院ファイナンス研究科の兼任講師等)を経て、 現在、麗澤大学学部長、京都大学経営管理大学院客員教授。この他、ISO 高等戦略諮問会議日本代表、世界企業倫理会議理事、内閣府国民生活審議会専門委員、経産省産業構造審議会専門委員等を経て、現在、国交省運輸審議会専門委員等。2008年に、全米企業倫理コンプライアンス協会より、国際倫理コンプライアンス賞を受賞。

    ■著書

    「誠実さ(インテグリティ)を貫く経営」(日本経済新聞社)
    「コンプライアンスの知識」(日経文庫)
    「CSR―企業価値をどう高めるか」(日本経済新聞社)
    「ビジネスエシックスー企業の市場競争力と倫理法令遵守マネジメントシステム」(共著:文真堂)

    麗澤大学 http://www.reitaku-u.ac.jp/

     

    (聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

    (掲載日:2011/8/10)

     

    ◆ISO26000で、自分たちのやっていることに気づく。

    (友田) オルタナのISO26000特集でも取材をさせて頂きましたが、麗澤大学では企業にも先駆けて、ISO26000の宣言をされ、活用されました。

    ( 高 ) この規格の趣旨の1番目はあらゆる組織が使うということです。企業、労働団体、消費者団体、NPO、病院、学校、どんな組織体でもです。誰かが使わない限りみんな様子見となってしまいますので、だったら私どもからやらせてもらおうと思いました。

    (友田) 確かに実践あってこそ意味を持ちますね。実はオルタナの特集で掲載させて頂き、京都の大学の方から「何ができるか考えて行かなくてはいけない」とメッセージがあり嬉しく思いました。

    ( 高 ) 大学は閉鎖的な組織で、人を育てることができる機関でありながらその能力を十分に発揮している大学は少ないと思います。ISO26000は自分達がやっている仕事に気付く、改めて考えてみるキッカケになります。今までやってきたことの意味が認識できれば、その取り組み姿勢は更によくなります。普通の企業では、ISO規格と言われると、やらされ感から嫌になるかもしれませんが、第三者認証規格ではありませんので、「自分達の組織を元気にするため」という目的をもって活用すればよいのではないでしょうか。

     

    ◆企業と消費者は、「契約関係」から「信認関係」に移行している。

    (友田) 大学もその存在意義が問われていますよね。日本と海外との比較をすると海外の大学では卒業生は商品というような考え方があって、いかに社会で活躍できる卒業生を輩出するかに力点を置いています。ですので、入学は易しく、卒業は厳しい。日本とは逆のように思うのですが。

    ( 高 ) 入試という調達部分で、原材料をある基準によって選別し、それを4年間で製造し、品質検査をしたうえで世の中に送り出す、という比喩ですね。この説明を学生たちにすると、「私達はモノじゃない」と言われたことがあります。では、モノと人の違いは何か。カントは「人を人たらしめるのは何か」と徹底的に考え「人は自分自身で守るべき規範を決め、自らを律していく理性を持っている」と結論づけました。本当に自由な人間は選ぶべき基準を自ら決め、それでもって自らを律する存在としたわけです。その意味で、話はずれてしまいますが、私は、教育に力は入れるものの、学生たちを商品として扱うことは一切ありません。

    加えて、学生と大学の関係について考えてみたいのですが、これは単なるサービス提供者とサービス購入者の間の契約ではありません。契約関係とは同程度の情報を持っている者同士が、自分の目的を達成するために、相手を手段として扱う取引関係を指します。この定義に立って、両者の関係を見てみますと、そこには圧倒的な情報格差があり、とても契約と言えるような状況にはありません。この関係は、その逆の信認関係と呼ばれるものにあたります。そこでは、信頼された側は信頼してくれた側の利益を第一に考えて行動し、その分野のプロであれば当然払うであろう最善の注意を払って事にあたらなければなりません。これは大学と学生だけでなく、医者と患者、企業と社会の関係にも当てはまります。企業と社会の関係は、かつて想定されていた契約から、間違いなく信認へと移行しています。

     信認に移行すると倫理的発想がより一層重要になってきます。信認関係においては、情報優位にある側が、信じて疑わない側を裏切る誘惑に駆られるからです。そしてもし実際に裏切れば、大変な怒りを買うことになります。その激昂は、契約関係において相手を裏切った時の怒りとは比較にならないほど、大きなものとなります。その意味で倫理的発想が重要になってくるのです。

    高巌写真1

    (友田) ISO26000の前段として、そのような背景があるからこそ第三者が認定するのではなく、自分たちが自ら信認される組織にならなくてはいけないのですね。

    ( 高 ) ISO26000の第1の中核主題である「組織統治」では、組織の理念やミッションを定めることが必要です。かつて不祥事が多発した時代、「日本企業は、集団志向的な発想をする社員が多く、それが不祥事につながる」といわれました。しかし、その原因は「組織として、明確な価値や規範を示さなかったことにあった」と私は理解しています。守るべき価値や規範を示さなければ、しかも本気になって掲げられなければ、企業で働く者は、どうしても売上や利益といった金銭的尺度だけで物事を考えるようになってしまいます。その結果、企業の中では、結果(売上や利益)だけが強調され、プロセスを真剣に考えることがなくなってしまいました。これが駄目だったわけで、一緒の集団で働く人たちを大切にするという発想そのものが問題だったわけではありません。組織のために犠牲を払うとか、みんなのために貢献することで自分が喜びを感じる、こういう気持ちは、むしろ組織を強くする上で、とても大事な倫理であると考えています。

    (友田) 高先生の研究で、「経営理念の浸透とパフォーマンスの因果関係」を示されていますが、持続可能性という観点から考えても、ミッションや理念が組織に浸透していることが大事だと感じます。ISO26000はそれを浸透させるためのツールとして有効だと思っています。

    ( 高 ) 企業のミッション・理念を調べてみると、大よそ柱は3つあると思います。

    高巌教授と友田景

    1.お客様基点・顧客視点を大切にすること
    2.他のステークホルダーと良好な関係を保ち、さらに発展させて
      いくこと
    3.組織的な独善に陥ることなく、自らを革新していくこと

     これらの理念に立ち返り、自身のあり方を考え直し続けることで、組織の持続可能性が高まってくると思います。こんなことは分かっていると言いながらも、企業では、いつの間にか、顧客基点が事業部基点にひっくり返ったり、ステークホルダー無視が常態化してしまったりするものです。このため、企業は常に自身を冷静に眺め、形式主義が蔓延していれば、それを打破し、自己脱皮を続けていく必要があるわけです。そのための原点として、理念の3つの柱があると思っています。

     

    ◆ISO26000を使いこなす10のステップ

    (友田) 最近企業のCSR報告書を見ていると、報告書の形式が中核主題毎になってきました。日本人らしく網羅的にきれいに並んでいるのですが、組織として何をするのかという理念やミッションから注力している活動が報告書を読んでも見えないことが多いです。

    ( 高 ) 中核主題毎に記載しているのは「中核主題に取り組んでいる」ということを対外的に説明したいがために、分けているのでしょう。対外的にアピールすることを考えれば、それでよいかもしれませんが、規格が重視する「パフォーマンス」ということを考えれば、むしろ、何を優先的な課題と考え、取り組んでいるかを示す方が重要と思います。取り組むとは、課題をしっかりと確定し、その進捗を具体的に捉える尺度を決めて、定期的に測るということです。最初から膨大な数の課題に取り組む必要はありません。自身が持っている経営資源を有効かつ積極的に活用し、取り組める課題から始めればよいかと思います。そしてやりっ放しではなく、それぞれパフォーマンスを測っていく。その結果、出てきたデータを関係者にフィードバックし、皆のモチベーションをさらに高めていく。私どもの大学の経験ですが、これにより皆がどんどんやる気を出してくれています。組織がこんなに元気になるのでしたら、規格を使わない手はないと思います。使わなければ損だと思いますよ。

    (友田) 麗澤大学ではどのようにISO26000を実践されたのですか。

    ( 高 ) ISO26000は7つの章から構成されていますが、1~3章は前段部分、4~6章は原理・原則、ステークホルダー関与、中核主題などの重要概念の説明部分、7章はこれらを組織にいかに統合するかを示した実践部分となっています。7章から入ると、結果的に4~6章の内容を確認しながら態勢づくりを進めることになりますので、私は、人には7章からやりましょうと言っています。麗澤大学も、7章から始めました。7章の内容は、要約すると下記の10のステップに集約されます。

      1.組織のトップがコミットメントを表明する。
      2.組織の活動領域とステークホルダーを特定する。活動領域とは中小企業であれば、たとえば、ラインとスタッフ、
        大企業であれば、事業単位など。ステークホルダーについては、組織の活動が影響を与える、あるいは影響を受ける
        利害関係者グループ別に分類する。
      3.7つの活動主題ごとに自組織で考えられる課題を幅広に列挙する。
      4.活動領域と7つの中核主題(課題)との関連を整理する。
      5.ステークホルダーの視点から課題を絞り込み、あるいは追加し課題マトリックスを仕上げる。その上で、課題群に
        優先順位をつける。
      6.課題の取り組みを推進する所轄部署を決定する。
      7.パフォーマンスを測るための尺度を決め、定期的に測定し、その結果を開示する。
      8.尺度が妥当であるか、図り方は適切か、新たな課題を追加する必要はあるかなど、ステークホルダーの関与を促し、
        取り組みに関する信頼性を担保する。
      9.取り組みが進んでいるか、さらに改善すべき点はあるかなどを確認する。改善すべき点があれば、改善計画に
        落し込み、組織として継続的な改善を展開する。
     10.以上の内容を確実なものとするため、「管理一覧」を作成する。

     10のステップの前半は何をやるのか明確にする作業、後半は成果を上げていくための工程と考えればよいかと思います。

     

    ◆ISO26000の活用で、日本の中小企業が元気になる

    (友田) 大企業は、CSR報告書のインデックスをISO26000の中核主題とするなど意識的な取り組みが見られますが、中堅中小企業がISO26000を取り組む上でポイントとなるのは、どのようなことでしょうか。

    ( 高 ) ISO26000の手引書が、日本規格協会から発行されていますが、中核主題にそれぞれの課題が列挙されており、全部で200-300の課題が例示されています。それを全てリスト化して、やっているかどうかの確認をしている企業などが見受けられますが、そこに書いてあるものを全てやりなさい、などとは規格に書いておりません。それらはあくまでもサンプルです。自分の事業活動を整理し、中核主題との関連で、出来ることは何か、やるべきことは何かを並べ明確にすること。そして、優先課題を決め、経営資源を積極的・戦略的に投入すること。これをやっていかなければなりません。

    (友田) 確かにその会社の事業に則したものでなければ、その会社しかできないCSRの取組みは生まれてきませんよね。そのためには、経営資源と経営課題から優先順位を決めることが確かに重要だと思います。 少し話は変わりますが、ISO26000が日本のものづくりを守る役割を果たすのではないかと考えています。特にアメリカ、ヨーロッパと取引関係にあるグローバル企業ではサプライチェーンにもCSR調達を求めている要請が日々強くなっているように感じます。中国を含めアジアの諸外国では、その要求に応えることには随分と時間がかかると思っています。それができればグローバル企業の取引で優位に立てますし、日本人や日本の企業の特性を生かせば、必ずできると思います。

    ( 高 ) アメリカは、コンゴやその周辺国より密輸されている鉱物を問題として取り上げ、鉱山会社は当然のこと、それを原材料として使用する企業にまで情報開示を求めています。従来の有害化学物資や児童労働・強制労働問題だけでなく、人権問題との絡みで希少資源のトレーサビリティまで高めなさい、と要請しているわけです。言うまでもなく、それは1次、2次のサプライヤーにとどまる話ではありません。「サプライ・チェーン」全体として、対応していく必要があります。

     大変厳しい要請ではありますが、これに対応できる企業にとっては、逆にビジネスチャンスにもなります。例えば、サプライヤーのリスク評価を合理的な方法で実施し、リスクが高いものに関しては、深めに確認作業を行っていく。

    高巌教授と友田景のツーショット写真

     こうした取り組みをしていれば、何をやっているのかを説明できるようになります。重要なのは、結果の完全性ではなく、問題にどのような考え方と姿勢で真剣に取り組んでいるのかを説明できるようにしておくことなのです。そのために、ISO26000は有効なツールの1つになると思っています。

    (友田) 中小企業は余力があるところが少ないでしょうから、プリミティブに本当にその企業に合った物にカスタマイズできるかがポイントだと改めて認識しました。広く多くの事業者がISO26000に取り組めるように支援をしていきたいと思いを新たにしました。本日は、ありがとうございました。

     

    ※『麗澤大学のISO26000の取組み』についてやご講演など高巌教授へのコンタクトは、弊社までご連絡下さい。

     

     

      

      

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