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コミュニティ ユース バンク モモ 代表 木村真樹氏 コミュニティユースバンク モモ 木村真樹氏写真

コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事 http://www.momobank.net/

 1977年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後、地方銀行勤務を経て、A SEED JAPAN事務局長やap bank運営事務局スタッフなどを歴任。2005年にmomoを設立し、若者たちによる"お金の地産地消"の推進や、社会責任・貢献志向の企業やコミュニティビジネス、NPOへのハンズオン支援を行っている。NPO法人名古屋NGOセンター理事、愛知淑徳大学非常勤講師(パブリシティマネジメント入門)なども務める。著書(共著)に『NPOと社会的企業の経営学』(ミネルヴァ書房・2009年)など。あだ名は「きむ」。

木村真樹の個人サイト http://kimura-office.net/

木村真樹 ツイッターアカウント http://twitter.com/#!/kimuramasaki

 

(聴き手:ビズデザイン株式会社 取締役 友田 景)

(掲載日:2011/2/1)

「NPOバンク」ではなく、「地域資源バンク」

(友田) 木村さんが代表理事を務めているコミュニティ・ユース・バンクmomoの「NPOバンク」というのは非常に面白い仕組みですね。

(木村) 2005年10月に設立しましたので、5年が経過したところです。みなさんからの出資金を、NPOやコミュニティビジネスなどの地域課題を解決する事業を行う個人・団体へ融資をしています。つまり、みなさんのお金を介して、地域を豊かにする事業を応援するしくみです。

(友田) 日経新聞のお正月の特集でも登場されていましたね。非常に注目度の高い事業ですよね。

(木村) 最近のmomoはますます面白くなってきました。少しずつ認知されてきたのか、ニーズが高まっているのを感じます。昨年度まで5年間で11件、合計3,000万円の融資をしてきましたが、今年度に入ってすでに10件、融資総額は5,000万円を超えています。その背景には、momoには出資者が420人(団体含む)いて、その人たちが総額4,500万円ほどを出資してくれているのですが(2011年1月現在)、単にお金を出すだけではなく、融資先の応援団にもなってくれています。イベントのお手伝いにはじまり、情報提供や人の紹介など色々な形で応援してくれています。顔が見える関係でお金を融通しているので、強い絆で結ばれているんですね。そこから新しいコミュニティが形成されていきます。なので、単にお金を融資する「NPOバンク」ではなく、地域の資源を融通し合う「地域資源バンク」の方が実態にあった呼称だと思います。

(友田) なるほど、「地域資源バンク」とはいい名前ですね。私は、地域活性化の仕事に携わっていますが、地域資源の発掘というのはひとつの課題です。そして言い古されていることですが、地域活性に必要なのは、「若者、よそ者、バカ者」といいます。momoでも若者が活躍しているようですね。

(木村) そうです。若者がいなければ、momoは成り立ちません。僕たちのところに相談に来る融資先は、普通の金融機関で貸せないところが多いわけですから、当然大変です。だからチームを組んで支援をしています。その中心となるのが、momoレンジャーと呼ばれている若者を中心としたボランティアスタッフです。momoレンジャーは、出資者と融資先をつなぐコーディネーターの役割を担ってくれており、自分の時間やスキルを提供したいという20~30代の若者たちが中心となって構成されています。普通の金融機関なら担当者が融資先の事業についてあれこれ口を出せるかもしれ
ませんが、僕らは知識も経験もないので、口出しできない。ただ、一所懸命話を聴くことはできます。そして一緒になって考えることができます。それがハイブリッドな関係を成し、物事を前進させていきます。

モモ 木村真樹氏写真

◆「お金」の地産地消を実現する ~金融のローカル化~

(友田) 確かに若者の潜在能力は計り知れないですからね。話は変わりますが、木村さんがmomoを設立しようと思ったキッカケは何だったのでしょうか。

(木村) 大学卒業時に「好きなことを仕事にしたい」と思って就職活動をしましたが、上手くいかず、それなら「好きな場所で仕事をしたい」と思って、地元である名古屋の銀行で働き始めました。しかし、時代は不良債権処理の真っ只中で、好きな場所を元気にできる仕事やお客さんに喜ばれる仕事はなかなか出来ませんでした。

 そもそも地域に元気がないのは、その地域に事業がないからともいえます。その事業を起こすには、当然お金が必要です。でも、一人あたりの貯蓄額は都市よりも地方の方が多いにも関わらず、私たちの預けたお金は金融機関を通して都市に集められ、再び地方に融資されます。こうした預貯金の使い道(融資先)は、目に見えないごく一部の人たちによって決められて、私たちの意思が反映されることはほとんどないのが現状です。自分の将来のために蓄えている私たちの貯蓄が、実は未来を壊す形で使われていることだって考えられます。

モモ 木村真樹氏写真

(友田) そうですね。僕もわずかな貯金ですが、自分の預けたお金がどのように運用されているのか、気に掛けていませんね。

(木村) この「お金の中央集権」を防ぐには、まず貯蓄したお金が地域で回るような仕組みをつくらなければならなりません。そこで期待されるのが、地方銀行や信用金庫といった、その地域にしか存在しない金融機関ですが、2008年3月期連結決算では、米サブプライムローン問題で損失を計上する地域金融機関が相次ぎ、サブプライムローンに直接関連した金融商品による地銀、第二地銀の損失は400億円を超えたとの報道もありました。地域貢献を理念に掲げる地域金融機関であっても、経済のグローバル化に飲み込まれていく中で、私たちのお金が活かされるべきは、どこに使われるかわからない「グローバル化」よりも、自分と生活する場所の、地域に暮らす人同士の、作る人と買う人のつながりをつくる「ローカル化」ではないでしょうか。

(友田) なるほど。それで真に地域の発展に寄与するお金のあり方、使われ方を考え、実践しようと思ったわけですか。

(木村) そうですね。地域に住む自分たちが暮らしの現場の実感をもって、必要なところに必要なだけのお金を使えるようにしたい。自分たちの暮らす地域の未来を主体となって考え続けながら、お金の使い道を決めたい。それはつまり、自分たちの手に自分たちの生活を取り戻すということだと思うんです。どこか遠くで誰かが勝手に決めるのではなくて、自分たちのことは自分たちで決める。地域でちゃんとお金が循環する。momoはその選択肢のひとつになろうと考えました。

 

◆自分の暮らすまちで、自分の子や孫がずっと暮らしていけるように。

(友田) 確かにお金の使い方に選択肢を増やすことは社会を変えるきっかけになると思います。木村さんがmomoを通じて目指している社会とはどのようなものでしょうか。

(木村) 最近、momoのコンセプトの「地域でずっと暮らしていける」というところの主語を意識するようになりました。今年度は設立以降初めて福祉系の事業者に融資を実施しました。知的と身体ともに最重度の小学生を支援する事業なのですが、障がいがあってもずっと暮らしていける地域にしていきたいという思いで事業をされています。また、在住外国人を支援している団体にも融資をしました。やはりリーマンショック以降、在住外国人の雇用状況も大変厳しく、それに対して地域の雇用を守るような事業に融資をしています。色々な人が地域にいる多文化共生は、これからの社会を表すキーワードのひとつだと思っています。

 僕は、母子家庭で育ち決して裕福な家庭ではありませんでしたが、母親が一生懸命育ててくれたおかげで、大学まで卒業させてもらいました。その影響からか子どもの頃は、「豊かになりたい」という思いが強かったです。ただ子どもの頃と違うのは、「豊かになる」という言葉の主語が、“自分ひとりが”から“地域全体が”に広がったことです。自分が育ったまちで、子どもも孫も暮らしていけるようにしたい。仕事がないから都会に出るという選択肢のない社会は豊かとは言えないと思います。色々な人が暮らしていて、色々な仕事があって、つながりや絆を感じられる地域をつくっていきたいです。

(友田) 確かに多様化は豊かさの表れだと思います。地域の豊かさを支える「地域資源バンク」であるmomoの取り組みにこれからも注目します。本日はありがとうございました。



■NPOバンクについて話を聞きたいなど木村真樹さんへの講演等のご依頼があれば、弊社までご連絡下さい。





◆木村真樹さんのおススメ本

 団体の名称になっている『momo』。これは、1976年にドイツの児童文学作家ミヒャエル=エンデによって書かれた『モモ』という童話から由来しています。

「時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」

 時間どろぼうに盗まれ、モモが取り返してくれたのは単なる時間ではなく、家族や恋人、友だちと過ごす豊かな時間であり、ひとりで過ごす大事な時間です。また、そういう時間を大切だと感じられる感受性です。そして、何がそれを奪うのかを知る想像力や考える力です。
 あらゆる情報が飛び交い、あらゆるモノが手に入る便利で自由なはずの現代社会で、あわただしく踊らされるわたしたちはまるで、時間どろぼうに時間を盗まれてしまった「モモ」の世界の住人のようです。『コミュニティ・ユース・バンク momo』は本当に大切なものを見抜く感受性や闘うための想像力を、自分たちの手に取り戻したいと願いが込められています。

木村真樹 友田景 写真

 

  

  

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