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【ビズワード】「旅おこし」

投稿日時:2011年09月20日 14:29

木村乃です。

最近、シティセールスとか観光とか、地域ブランディングとかいうテーマの講演会や研修の依頼が増えてきた。人口の減少による消費市場の縮小、産業の空洞化による雇用機会の減少などが、新しい市場としての「交流人口」や新しい産業としての「観光産業」を育てたいという思いの強さが表れているのだと思う。その思いにはできるだけ応えていきたいと思う。
依頼をくださる方々とじっくりお話をすると、その多くが「観光振興」、つまり有名観光地のようになることをイメージされていることがわかる。しかし、せめて教科書に載るか、世界遺産級の知名度がある文化財(有形、無形。景勝地等も含む。)や、小説に出てきたり入浴剤に名前が入るほどの温泉地でなければ、有名観光地にはなれようはずがない。それなのに、あくまでも「観光振興」にこだわる傾向が強い。

僕はその原因が、「観光」という狭い概念に縛られた発想にあるのではないかと考えている。
例えば、ゴールデンウィークや夏休み、年末年始にみられる「帰省」。これは「観光」だろうか。震災復興のために東北地方に赴く行動は「観光」だろうか。自然の中を散策する「フットパス」は「観光」だろうか。水戸黄門御一行は全国を「観光」していたのだろうか。砂漠に井戸を掘りに行くのは? 援農に行くのは? 視察は? スキーに行くのは? 霊峰・富士に登る富士講は? フーテンの寅さんが「おいら、旅にいってくらあ。」と言い捨てて出かける行動は?このように「観光」という表現がピンとこない“移動行動”は実に多種多様にある。

僕はこれらを「旅」と呼ぶのがいちばんしっくりとくる。「旅」のうち、文化財巡りをするものが「観光」であるにすぎない。考えてみれば、温泉旅行だって「観光」というより癒しの旅だ。そう捉えたときに、新しい価値を発想することができる。
そこで、僕は「観光振興」という言葉を一切やめて、「旅おこし」という概念で全国各地が様々な交流促進に取り組むことを提案したい。

第1回『観光甲子園』でグランプリ(文部科学大臣賞)を受賞した島根県隠岐郡海士町にある島前高等学校の生徒たちの企画「ヒトツナギ」は、タイトルどおり、人と人とをつなぐことを目的とした「旅おこし」である。この企画のプレゼンテーションで生徒たちは「観光名所には行かせません!」と高らかに宣言している。「観光」という狭い概念では語ることのできない「旅」の魅力を捉えた秀逸な企画だ。

「観光」という言葉を一切使わない「旅おこし」に取り組むこと。これが、既存の観光地ではない地域が、それぞれに魅力的な交流機会を増やし、心も経済も豊かにしていくための基本的方向である、と僕は確信をもって主張したい。

 

コメント / トラックバック 1 件

  1. 桝井 より:

    いつも、メール,有り難うございます。
    「旅おこし」。面白い概念ですね。
    私も、常々「観光」と地域振興という結びつけ方に違和感を覚えていました。つい最近の傾向かもしれませんが、<「観光」によって交流人口を増やし、消費に結びつける>こういった図式への違和感だろうとも思います。
    何か、「観光」という言葉さえも、本来の意味から外れ、<観光地そのものが「消費」されている>ように思います。
    本来は、地域の文化(暮らしぶり)に触れる「旅」だったのでしょうが・・・。
    新しい、コンテクストが必要な時期かもしれませんね。

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