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“文化”を媒介とした、交流による地域活性化を!

投稿日時:2011年10月12日 10:05


木村乃です。

2009年4月、(財)日本生産性本部が設置している「観光地域経営フォーラム」のサイトにコラムを寄稿した。

■No.3  「“文化”を媒介とした、交流による地域活性化を!」

http://kanko-forum.net/main/2009/06/no3-af01.html

思えば、「地域文化」というものの大切さを強く意識しはじめたのはこの頃だった。

以下に、全文を転載します。ぜひご一読ください。

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筆者は昨年5月末までの5年間、民間人の任期付採用制度により神奈川県の三浦市役所に在籍した。市役所では、政策経営室長、政策経営部長、理事(政策経営担当)と役職名が変わったものの、ミッションは一貫してまちづくり政策全般と行政経営改革の立案及び実行指揮であった。その中で注力してきたことのひとつがシティセールスである。私たちがとったシティセールスの戦略は、「露出による刺激のフィードバック」とでもいうべきものだった。フィードバックしたかったのは「愛郷心」である。

■スクリーン、テレビを通して観るわがまちの姿を再発見

フィルムコミッション。劇場用映画やテレビドラマ、CM、プロモーションビデオ等の映像作品の制作にあたって必要な“ロケ撮影”をサポートする事業である。平成16年に市役所職員有志と三浦商工会議所青年部等に所属する若手事業者たちが連携して設立した任意団体「みうら映画舎」(平成19年に「NPO法人みうら映画舎」設立)と三浦市営業開発課が今も年間数百本の撮影に対応している。

今や三浦市は「ロケの聖地」、「ロケ銀座」とまで称されるようになった。そのような状況だから、しばしば「マスメディアに露出すれば大きな宣伝効果が期待できますね」、「経済効果はどれくらいですか」等とよく言われるが、私たちの本当の狙いはそこにはない。

「寅さん」や「釣りバカ」シリーズなどのごく一部の“ご当地映画”を除いて、撮影地を探している制作者は絵はがきに載っているような景勝地にはまず関心を示さない。寂れた民家の軒先だとか、猫が徘徊しているような路地だとか。何でもない静かな海辺、磯。そんな風景や無形の風情に背景としての価値を見いだす。地元住民がふだん何の関心も寄せないような日常の風景にこそ、映像的な価値があるというわけだ。

そして、スクリーンやテレビ画面を通じてその風景を目の当たりにしたとき、地元住民はその風景や風情に対する愛着と誇りを再発見するのである。「こうして観てみると、意外といいまちだったんだな」。そう感じてもらえればしめたもの。「こんなにいいまちなんだから大切にしていかなくちゃ」。そこまで来れば本望である。

このようなフィードバックを効果的にもたらすため、市民エキストラ登録も進めた。登録者数は500人以上にのぼり、5万人市民の1%以上がこの活動に参画していることに大きな意味がある。

■都心の消費者を鏡にして自らを再発見

東京都千代田区神田に「明治大学プロデュース 三浦市東京支店“なごみま鮮果”」という店舗がある。明治大学商学部と三浦市の協働により平成18年に開業したアンテナショップだ。都心と三浦の交流を生み出す拠点とすべく三浦・三崎の郷土料理の試食会を開催したり、神田の地元催事に模擬店を出店したりと活発に活動している。

2006年の「神田縁起市」で開催された創作屋台コンペでは、「なごみま鮮果」の別バージョンとして出店した「すずみま鮮果」が優勝を獲得した。学生たちと一緒になって催事を盛り上げ、都市住民の好意的な反応を肌で実感するという体験は、普段三浦市内で客待ちの商売をしている産直販売店や食品加工業の皆さんにとって愛郷心をくすぐられるものとなったに違いない。

■若者たちとの出会いから新しい可能性を発見

フィルムコミッションの活動母体として設立した「みうら映画舎」は、その本来の活動目的を三浦市の地域活性化であるとしている。フィルムコミッションはそのための有効な方策のひとつではあるが全てではない。

「みうら映画舎」はフィルムコミッション以外にも様々な活動をしているが、そのひとつが「みうら元気屋」という出張物産屋台である。その主な出店先はJリーグやプロ野球の試合会場である。川崎フロンターレや横浜FC、湘南シーレックスと連携して、試合会場である等々力競技場、三ツ沢競技場、追浜球場等に出店している。大漁旗を掲げ、はっぴを着込んで「とろまん」や「とろちまき」等の創作食品を販売し始めると、瞬く間に長い行列ができ、文字通り飛ぶように売れていく。キックオフしてもなお行列から離れようとしないお客さんもいる。スイカだってマグロだってどんどん売れていく。創作食品を開発した「みさきまぐろ倶楽部」や「三崎朝市協同組合」の皆さんは嬉しい悲鳴を上げる。

三浦・三崎を訪れる観光客の多くは中高年層である。若者が来ないわけではないが、これだけ大挙して押し寄せるという経験はそれまでなかった。サッカー観戦を終えたサポーターたちがスイカをぶら下げて会場をあとにする姿を想像できるだろうか。こうした若者たちとの出会いは、これまでとは違う顧客ターゲットを意識する大きな契機となった。

■スカベンジ ・・・ ライフスタイルを集客源に

三浦市の吉田英男市長は就任後初めて迎える新年度(平成18年度)にあたって、「クリーンアップ・プロジェクト」に着手した。まちをきれいにしよう、ただそれだけのことである。市の職員らはこのプロジェクトのキャッチフレーズを「ライフスタイル美(み)うら宣言」と定め、まちをきれいにするという思想と行動を三浦市民共通のライフスタイルとして定着させよう、と意気込んだ。そして、これまでの3年間に70数回の「スカベンジ」イベントを開催し、他都市からも集客することに成功している。

「スカベンジ」とは「ごみ拾いをする」という意味の英語である。大手電機メーカー、自動車メーカーをはじめとする多くの企業のCSR(企業の社会的責任)と連動したごみ広いイベントは日本テレビの「愛は地球を救う」でも取り上げられるなど、多くの市民と市外からの来訪者を巻き込んだエンターテイメント性のあるボランティア活動として定着しつつある。愛郷心を行動に移してもらう「クリーンアップ・プロジェクト」はシティセールスとして行った活動ではないのだが、結果的に同じような効果をもたらしたことになる。

■“観光”を超えて、 “文化”を媒介とした交流による地域活性化を

地域住民自身がそのまちに愛着を感じ、誇りを持つことなくして観光振興はありえない、と筆者は思う。しかも、その愛着や誇りはただ漠然とした思い込みだけでは足りない。地域外の人々に喜んでももらえた!という実感を伴ったものであってほしい。そのためにはマーケティング・リサーチが必要である。

ところが、地域における観光振興にあたってマーケティング・リサーチを実施している例は筆者の知る限りきわめて少ない。客待ち殿様商売の習慣が根強いのだろうか。そんなことでは到底やっていけないし、観光事業者自身もそのことには気づいているに違いない。紹介したいくつかの事例は実践的マーケティングの参考例になるだろう。ぜひ、集客マーケティングの専門家等に相談しながら独自のリサーチに取り組んでいただきたい。

これだけ情報過多の時代に集客力、リピート吸引力の決め手となりうるのは、ありきたりの景勝地や施設ではなく、そのまちが醸し出す風情や人情、ライフスタイルそのものなのではなかろうか。特定の地域における一定の共通様式を“文化”というならば、これからの観光振興は伝統的又は人工的な集客装置に依存する“観光”をアピールするのではなく、その地域の“文化”をアピールし、堪能してもらう交流<“文化”を媒介とした交流による地域活性化>を目指すものであってほしい。そう考えてこそ、全国すべての地域に観光振興の可能性が見いだしうる。

温泉なんかなくてもいい。有名な景勝地がなくてもいい。そこにある自然や農林漁業のなりわい、その地域らしい地場産業と人々の暮らしがあればいい。何にもない村は「何にもない」を売りにすればいい。少しの知恵と専門家の力を借りて、このような “文化”を来訪者に実感していただく機会をつくりさえすればよいのだ。丁寧に対応しきれないほど大量のお客さんに来ていただく必要はない。身の丈にあった目標を持ち、身の丈にあったプロモーションをすればいい。

先に述べたマーケティング・リサーチをやってみれば、自分たちが気づかなかった“意外な”魅力に気づくことができるだろう。どんなまちにも村にも必ず人を引きつける魅力があるはずである。そうでなければ、そこに人が住んでいるはずがない。

(以上)

 

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